はじめに:「脳は年齢とともに衰える」は本当なのか?🧠
「脳は経年劣化するだけではない」
そう聞いたら、あなたはどう思いますか?
私が学生の頃は、
「脳細胞は20歳頃を境に、毎日何万個も減っていく」
といった話をよく耳にしたものです。
つまり、年齢を重ねれば重ねるほど、
脳の能力は低下していく。
そんなイメージです。
しかし脳科学の研究が進むにつれて、加齢によって低下する能力がある一方、中年期になっても維持されたり、経験を重ねることで強みを発揮したりする能力があることが分かってきました。
若い頃に犯した、配慮のなさや短気による失敗。
私自身、思い返せば数え切れません。😅
それらを単に「若気の至り」で片付けるのではなく、
「若い頃は、まだ自分の脳をうまく乗りこなせていなかったのかもしれない」
と考えてみると、少し見方が変わります。
そして中年期に差しかかった頃、長年積み重ねてきた経験や知識が、いよいよ力を発揮し始める。
今回読んだ『年をとるほど賢くなる脳の習慣』は、そんな中年期の脳について考えさせてくれる一冊でした。
📚 中年の脳には「若い脳」とは違う強みがある
本書では、長期間にわたって同じ人を追跡する**「縦断研究」**が紹介されています。
縦断研究とは、異なる年代の人を一度に比較するだけではなく、
「同じ人を何年にもわたって追跡する研究方法」
です。
こうした研究から見えてくるのは、
「若い=すべての脳機能が優れている」
とは単純には言えないということです。
確かに、処理速度など若い年代が有利になりやすい能力はあります。
一方で、長年の経験や知識を生かして物事を判断したり、感情をコントロールしたりする能力など、中年期だからこそ発揮しやすい強みもあります。
考えてみれば、これは私たちの日常的な感覚とも一致します。
例えば、
- 難しい手術をお願いする医師
- 複雑な案件を相談する弁護士
- 美味しい料理を作ってくれる料理人
- 専門的な趣味を教えてくれる指導者
こうした人を選ぶとき、まったく経験のない新人と、何十年も経験を積んだ熟練者がいたらどうでしょう?
難しい仕事ほど、経験豊富な人にお願いしたいと思うのではないでしょうか。
つまり年齢を重ねるということは、
「失うこと」だけではなく「積み重ねること」でもある。
ここが本書を読んでいて非常に興味深かったところです。
① 年齢を重ねると「失うもの」だけではない
若年層と比較すると、中年期には処理速度や一部の記憶機能などが低下していくことがあります。
しかし、その一方で、
経験、判断、他人への配慮、感情のコントロール
など、人生経験とともに培われる能力があります。
中年になると感情との付き合い方も変わる
本書では、感情に関する興味深い研究も紹介されています。
若い頃に比べて年齢を重ねると、ネガティブな情報よりもポジティブな情報へ注意を向けやすくなる傾向が見られるというものです。
人間はもともと、危険や不安などのネガティブな情報に注意を向けやすいとされています。
これは生存という視点から考えると、理にかなっています。
例えば大昔、草むらが突然ガサガサと揺れたとします。
「風だろう」
と楽観的に考えるより、
「敵が隠れているかもしれない!」
と警戒した方が、生き残る可能性は高かったでしょう。
だからこそ私たちの脳は、悪いニュースや危険な情報に敏感なのかもしれません。
それでも年齢を重ねることで、嫌なことだけにとらわれず、
「その中でも良かったことは何だろう?」
と考えられるようになる。
これは、中年期の大きな強みの一つなのではないでしょうか。😊
② 他人を気遣い、新しい刺激を受けることで脳は変化する
「中年の危機=誰にでも起こる」とは限らない
40代、50代になると耳にする言葉に、
「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」
があります。
身体の変化、仕事、家族、将来への不安などから、
「自分の人生はこれでよかったのだろうか?」
と考えてしまう時期を指す言葉です。
ただし、これを**「中年になれば誰にでも必ず訪れる危機」**と考えるのは単純すぎるようです。
年齢と幸福感の関係についてはさまざまな研究があり、中高年になったからといって、必ず幸福感が下がり続けるわけではありません。
年をとることを、
「失っていく一方の時期」
と決めつける必要はないということです。
大人になってからも脳は変わる
さらに興味深かったのが、
「大人になったら脳はもう変化しない」
という考え方も、現在では修正されているという点です。
本書では動物実験などを通して、生活環境や刺激によって脳が変化することが紹介されています。
人間についても同じように、
「毎日をどう過ごすか?」
が重要になってきます。
人と話す。
相手を気遣う。
新しいことを勉強する。
趣味を楽しむ。
こうした刺激を何歳になっても持ち続けることが、脳にとって大切なのです。
「もう中年だから、脳は衰えるだけ」
と諦める必要はありません。
③ なぜ中年になると「人の名前」が出てこないのか?🤔
「あの人、何て名前だったっけ……」
「ここまで出ているのに!」
中年になると、こんな経験が増えてきませんか?
この、
「知っているはずなのに言葉が出てこない」
という現象は、
舌先現象(Tip of the Tongue/TOT現象)
と呼ばれます。
意外に、そのままの名前です。笑
名前を忘れた=すべての記憶が消えたわけではない
面白いのは、人の名前が出てこなくても、
「郵便局で働いている人」
「いつも帽子をかぶっている人」
「○○さんの隣に住んでいる人」
といった、その人に関する情報は覚えていることです。
つまり、
名前だけ出てこない=その人についての記憶そのものを失った
とは限りません。
名前のような固有名詞は、意味との結び付きが弱いため、年齢とともに取り出しにくくなることがあります。
一方で、職業、顔、出来事など、意味のある情報はいくつもの情報と結び付いています。
そこで、人の名前を覚えるときにも、
「○○さん」
だけで暗記するのではなく、
「○○さん=郵便局勤務=眼鏡=釣りが趣味」
など、複数の情報を関連付けて覚える。
これは私も実践してみたい方法です。
④ 中年の認知能力には「個人差」がある
ここまで読むと、
「中年の脳って素晴らしい!」
と思います。
しかし、手放しで喜んでばかりもいられません。
本書を読んで特に重要だと感じたのが、
中年期以降は、脳の状態に個人差が生まれやすい
という点です。
そこで登場するのが、
「認知的予備能」という考え方
です。
認知的予備能(Cognitive Reserve)とは、加齢や脳の病理的な変化があった場合でも、これまで培ってきた脳のネットワークや認知能力によって機能を補う力を説明する考え方です。
本書では、その認知的予備能と関係する要素として、
- 教育
- 人との交流
- 仕事
- 余暇活動
- 知的活動
などが取り上げられています。
ここから私が感じたのは、
「何歳になっても頭を使い続けることが大切」
ということです。
新しいことに挑戦する。
少し難しい課題に取り組む。
勉強を続ける。
趣味を持つ。
人と交流する。
年齢を重ねてからもこうした活動を続けることは、脳の健康を考えるうえでも意味があるようです。
⑤ 脳を鍛える習慣を身につけよう🏃
では具体的に、どのような生活をすればよいのでしょうか?
本書で紹介されている内容から、私が特に印象に残ったものを整理してみます。
有酸素運動を習慣にする
まず重要なのが、
「運動」
です。
ウォーキングやエアロビクスなどの有酸素運動と脳の健康については、さまざまな研究が行われています。
大切なのは、無理な運動を一時的に頑張ることではなく、
自分に合った運動を継続すること。
ウォーキングなら特別な道具もほとんど必要ありません。
「脳を鍛える」と聞くと、読書や計算問題などを想像してしまいますが、
身体を動かすことも脳の健康につながる。
これは覚えておきたいポイントです。
⑥ 脳の健康を考えた食生活🥦🫐
食生活についても、本書ではさまざまな食品が紹介されています。
キーワードとなるのが、
「抗酸化」と「炎症」
です。
本書で紹介されている食品には、
- ブロッコリー
- 赤ぶどう
- アボカド
- プルーン
- レーズン
- ケール
- クランベリー
- ほうれん草
- いちご
- さくらんぼ
- さやいんげん
- ブルーベリー
などがあります。
ただし、
「これさえ食べれば脳が若返る!」
という単純な話ではありません。
特定の食品だけに頼るのではなく、野菜や果物などを含めたバランスの良い食生活を心掛けることが大切だと感じました。
⑦ 記憶力を補う「関連付け」という方法
最後に、私が実生活でも使えそうだと思ったのが、
記憶する情報を増やす方法
です。
記憶を、天井から糸でぶら下がっているものだと想像してみます。
一本の糸だけでつながっていたら、切れた瞬間に落ちてしまいます。
しかし、
10本、20本と糸がつながっていたらどうでしょう?
一つが切れても、ほかの糸からたどり着けます。
記憶もこれと同じように、
一つの情報を、複数の情報と関連付ける。
例えば初対面の人なら、
「田中さん」
だけではなく、
「田中さん」
+「背が高い」
+「眼鏡」
+「営業の仕事」
+「野球が好き」
というように覚えます。
こうすることで、名前そのものが出てこなくても、別の情報を手掛かりに思い出せる可能性があります。
「未来の自分」を想像する
もう一つ面白かったのが、想像力を利用する方法です。
例えば、
「朝10時に薬を飲む」
ことを覚えておきたいとします。
単に、
「10時、薬」
と暗記するのではなく、
「10時になったら、自分がコップに水を入れて薬を飲んでいる姿」
まで頭の中で具体的に想像する。
時間、場所、行動など複数の情報を結び付けることで、思い出すための手掛かりを増やすわけです。
これは日常生活でもすぐ実践できそうです。👍
🧠 中年から実践したい「脳のための習慣」
本書から学んだことを私なりにまとめると、こんな感じです。
| 習慣 | 意識したいこと |
|---|---|
| 🚶 運動 | ウォーキングなどの有酸素運動を続ける |
| 📚 学習 | 何歳になっても新しいことを学ぶ |
| 🧩 挑戦 | 少し難しいことにもチャレンジする |
| 👥 交流 | 家族・友人など、人とのつながりを大切にする |
| 🥦 食生活 | 野菜や果物などを含むバランスの良い食事 |
| 🧠 記憶 | 一つの情報を複数の情報と関連付ける |
| 😊 感情 | 良い出来事にも意識的に目を向ける |
| 🎨 趣味 | 楽しみながら頭や身体を使う |
結局のところ、
「頭を使い、人と関わり、身体を動かし、新しいことを楽しむ」
という生活が大切なのかもしれません。
おわりに:中年の脳は、まだまだこれから
長年、
「年をとれば、脳は衰えていくばかり」
だと思っていました。
しかし本書は、そんな私の思い込みを大きく変えてくれました。
もちろん、加齢によって低下しやすくなる能力はあります。
しかしその一方で、長年蓄積してきた知識や経験を生かせる能力もある。
さらに、運動したり、勉強したり、人と交流したり、新しいことに挑戦したりすることも、これからの脳を考えるうえで大切です。
つまり、
中年になったからといって、脳の成長を諦める必要はない。
これは嬉しいですよね。😊
そして、私が特に気に入ったのが、
「社交的に、よく笑って過ごすこと」
です。
家族や友人、恋人など、大切な人と話す。
一緒に笑う。
新しい場所へ出掛ける。
知らなかったことを学ぶ。
好きな趣味を楽しむ。
そんな毎日そのものが、自分の脳に刺激を与えてくれるのだと思えば、年齢を重ねることも悪くありません。
見た目だけではなく、
頭の中も、いつまでも若々しくありたい。
「もう中年だから」ではなく、
「中年だからこそ、これからできることがある」
そう思わせてくれる一冊でした。
良い本に出会えました。
大樋町

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