はじめに:
著者はマシューサイドさん。
オックスフォード大学を主席で卒業、
かつ卓球選手として10年近く
イングランド1位の座を守った
スポーツ選手経験を持つ研究者です。
著者は、
自身が結果を残したスポーツ選手であることから、
スポーツ界に対する
戦略の解釈や人の育て方、
才能に対する考え方など
独特の洞察と視点により
私たちに新しい視点を示してくれます。
才能の塊のように見える選手も、
才能の一言では語れない努力を
陰ではしているものです。
生まれながらにして
頂点に立つものはいない。
と豪語する本書では、
スポーツ界において、
能力が平均的だったものが
どうやって勝者になったのか
才能を開花させ、
最高峰の成果を残すために
実際の勝者たちは何をやったのか
などに焦点をあて、
様々な人間や立場の例を使い
私たちに勝者の科学を教えてくれます。
スポーツに関する内容が多いものの
戦場における戦略や、
企業の戦略と呼ばれるものにも言及しており
彼らの中の勝者から学べることも
多く記載されています。
私たちの生活にも
スポーツ界の知見は生かされています。
サッカー界の少しでも早く
試合に復帰する医療技術は病院で、
トレーニングの栄養学は食生活で、
私たちの参考となっています。
私たちを勝者に導く知見とは
一体どんなものか?
学んだことをアウトプットします。
学んだこと:
才能の過大評価と練習の過小評価
本書の副題にある
『生まれながらにして
頂点に立つ者はいない』
という言葉が示す通り、
「才能」だけに頼っても
そこに勝利はないかも知れません。
テニス界のフェデラー、
ゴルフ界のタイガーウッズ、
彼らの美しいとも言えるフォームを見れば、
才能を疑わずにはいられません。
がしかし、
才能の裏には、
ほぼ確実に「努力」の2文字が存在します。
かつて脳科学の定説には
脳神経の成長は20歳をピークであり、
以後は年を経るたびに脳神経は死んでいく
と言われていました。
しかし、
イギリスのタクシー運転手の脳
を調べたところ、
『空間認識』を司る部位
は普通の人より
物理的にも大きく優れていた
と分かっています。
地理的を覚えるのに
複雑な地理を持つイギリスの街において
タクシー運転手になる事は
誉であり、憧れであり、
とても難しい事とされています。
毎日、脳を使う事で、
脳は歳を経ても発達する事が
既に調査済みな分けです。
脳は、時間と練習をする事で、
その練習が目指す事を実現できるように、
物理的に変化するという事です。
努力が成果として身を結ぶのは
努力が脳細胞を増加させ、
意識したり、感覚では捉えきれないレベル
で体を動かすことができる様になるから
と言うことができるでしょう。
確かに、
跳躍や短距離走などの「単純」な運動
では、先天的な才能がものを言うそうです。
生まれながらの筋繊維やその収縮力、
体のバネは成果に大きな影響を与えます。
ところが、
フェデラーの実力を分析したところ
彼の優れたところは、
先天的に親から遺伝で得た性質
ではなく、
後天的に心血を注いだ練習により得た
「予測力」であった
とされています。
スポーツや人生の課題は
短距離走の様に、
単純シンプルな物事ではなく
複雑に入り組んだものです。
その土俵で成功を目指すなら
勝者たち学び、
才能に頼るのではなく、
努力と練習をおろそかにしてはいけません。
記憶分野の研究者によると
平均以下の記憶力の持ち主、
「SF」と呼ばれる被実験者は
2年間の訓練の上、
世界トップレベルまで
記憶力を向上させた
という話も覚えておいて損はないはずです。
自分には才能がないと逃げるより
練習への過小評価を見直す方が
大きいな成果への近道であることは明白です。
体が脳をのっとる「1万時間の法則」
勝者が残した偉業の影には
強いメンタルが結果を左右した事
が少なからずあるものです。
しかしながら、
心の科学は進歩が遅く
まだまだ謎も多いのだと言います。
「だからこそ面白い」と、
著者はあえてメンタルについて、
本書の中の1章分を割いて記事を書いています。
著者の調べによると、
今や心とメンタルの進化論は、
新しい発見がいくつも見つかっているそうです。
一万時間の法則もその一つです。
何かの技術を収めるためには
必要な時間が10000時間必要である
と述べる論文は賛否があるものの、
時間をかけた練習は、
体が脳を支配してしまう現象
を生み出します。
プロのボクサーが試合を振り返った時、
極度の疲労から意識が朦朧としながらも
体はきっちりと練習どおり動けていた
と話しているのを見た事があります。
真に的をいた練習や訓練は、
脳の神経構造さえも変化させる
とは前章の通りです。
体が脳を乗っとる現象は
消防士の、
現場で「鼻が効く」現象
でも見ることができます。
熟練の消防士が、
火事現場において、
作業を開始する新人を静止し
「現場から去った方が良い」
と認識したとたん、
家屋が目の前で崩壊した
というエピソードがあります。
その消防士が、
なぜ崩壊が分かったのか?
と聞かれても、
その根拠は
具体的な原因を示すものではなく、
数多の現場を乗り越えた目、鼻、耳等の感覚、
はもとより、
訓練により体に染みついた行動力
がそうさせたのであり、
本人自身はそれを言葉では
説明できなかったのです。
楽器の習得や語学の習得も
同じようなことが言えるかもしれません。
楽譜を読んでからそれを頭で理解して
指を動かすのではなく、
熟練した演奏者は、
自然の流れで楽器を弾きます。
ひよこの雌雄判別師も然りです。
常人では見分けのつかない
ひよこのオスメス判断を、
脅威の速さで見分ける事ができますが、
具体的にどこを、どう見ているのか?
と言う質問には答えられないそうです。
体に染みついた技術は、
脳の意識を凌駕します。
それほどに熟練した技を持つまで
必要な練習もまが脅威的な量でしょう。
しかしその先には、
常人では理解できない世界が
確実に広がっています。
逆に言うと、
偉人や成功者が見せてくれる
真似のできない優れた技術も、
それが才能だけで片付けられない
と言うことも教えてくれます。
私は、
脳が判断に追いつかないくらいまで
自分の技術を高める努力を
今までしてきたでしょうか。
生まれながらの勝者はおらず、
その影に努力あり。
何度も聞いた言葉ながら
改めて取りたざされ考えてみると、
胸を張って努力したとは
言えない自分がいました。
どんなブログや動画も、
それを作ってみた事がない者
には文句を言う資格はないのかも知れません。
「優越の錯覚」の罠
「あなたのドライブテクニックは
平均より上ですか下ですか?」
この質問に対し、
質問を受けた人の実に93%が
私は人より運転が上手い
と回答したそうです。
簡単な数学がわかれば、
93%の人が平均を超えることは
数学的にありえないことは明白。
いかに人は自分の実力を過大評価しているか
が浮き彫りになった心理実験です。
発見した研究者2名の名前を取り、
ダニング・クルーガーバイアス
と名付けられたこのバイアス。
このバイアスに影響された現象を
私たちは何度も見た事、
見せられた事があるはずです。
大した実績もないのに
上司に認められないと管を巻く営業マン、
編集者に記事を選んでもらえなかった記者、
入閣できなかった政治家、
挙げればキリがないはずです。
もちろん自分事も含め、
判断を下されたこと
に対し、
不満がない時
の方が少ないのではないでしょうか。
デビットベッカム選手は
実力や名声、そして美貌まで持ち合わせた
美しい、完璧な選手です。
しかし、
かつてのレアル・マドリードの監督、
ファビオ・カペッロは、
彼をチームレギュラーから外してしまいました。
ベッカムが補欠に格下げ。
数学的な正当解答を
そこ求める事はできないものの、
ベッカム自身もチームメンバーも、
それが間違いだと気づいていました。
にわかファンですらもその選択には
反対したのだと言います。
ベッカムのレギュラー落ちは
本来なら、
言い争いや訴訟問題にすら発展しても
決しておかしくない状態でしたが
ベッカム選手はどんな態度に出たのか。
ベッカムの取った態度とは、
素直に決断を受け入れる
というものでした。
ファビオ監督はチームのためを考えた
私にはもっと努力が必要である
とベッカムは語りました。
そして謙虚な態度を保持しつつ
いつもの愚直な練習に
文句を言わずに戻ったのです。
もし自分なら。
と考えずにはいられません。
不当な扱いを受けた時に
素直にそれを受け入れて
クソ真面目に仕事に戻れるでしょうか。
おそらく無理でしょう。
強く上司に噛み付くか、
陰で同僚に管を巻いていた事でしょう。
そんな態度では、
なんの解決にもならない事を
ベッカム選手は教えてくれます。
なぜなら、
その謙虚な態度こそが、
ファビオ監督の考えを変える第一歩
となったからです。
文句を言わず、
理不尽な指示を受け入れ、
黙々と練習に励むベッカム選手を見て
カッペロ監督は考えを変えました。
もとの方針を転換し、
ベッカム選手をレギュラーに復帰させました。
さらに、その結果は、
周りが騒いだからではなく、
ベッカムの態度とその練習の成果から
判断した事だと断言し、
考えを変更した事自体に対しても、
一ミリも悔しくないと語りました。
ベッカム選手の行動や思考から
学べることは多いです。
何に対しても、
思い通りにいかないだけで、
腹を立てる自分に事を思い返すと、
とても恥ずかしくなります。
上司の判断に不服を申し立てることなく、
足りない実力を認め、
努力を重ねること。
それが現状を打破する最適な一歩
となり得ることがあることを
私たちは忘れてはいけないでしょう。
不服な結果は、
改善できるチャンス
だと捉えてみることは
結局はそれが最善の道になり得るます。
終わりに:
卓球、テニス、サッカー、
自転車競技にボクシング。
様々なジャンルのスポーツとその選手の
栄光までの道筋について、
その光と影が、
著者の感ずるまま包み隠さず記されている
著者のコラムを寄り集めた本書。
スポーツへの美についてや、
社会とスポーツの関係を読み解くなど、
中々に深く高尚な内容ですが、
著者自身がスポーツマンのためか、
たいへん、分かりやすく、
そして遠慮がない。
勝者であっても、
そこには闇だって存在します。
ドーピングや八百長、スキャンダル
などの事実も記されており、
勝者の影には光のみではない
事も教えてくれます。
本ブログでは
見本にした部分を抜粋したものの
勝者の影の部分も見逃せません。
ぜひお手にとって、
勝者の科学に触れてみてほしいです。
大樋町
読書もいいけど、「聞く」のもおつなもの👇👇👇
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