第250回:BIG THINGSから学ぶ

読んだ本

はじめに:

高速増殖炉もんじゅ。
60年の歳月をかけ、
1.5兆円近くの国費を費やし、
生み出した電力のワット数は、、、。
驚く事なかれ、
0ワット
です。

世界には
メガプロジェクト
と呼ばれる事業があります。
もんじゅ建設、
オリンピックの開催、
島と島をトンネルで繋ぐ、
パンデミックを乗越えるための事業
など様々な、
国をあげて実施様な大規模な事業が
メガプロジェクトです。

しかし、
数多あるメガプロジェクトの内、
予算超過、工期の遅延、便益過小
の観点から振り返ると、
その事業の成功と言えるパターンは
恐ろしい事に
たった0、5パーセント
との調査結果が出たそうです。

この悲惨な結果は、
開発当初、事業完了当初は
その報告と分析がなされておらず、
今回、
著者が改めて1から調査をした結果、
明らかになったとのこと。
恐ろしい現実ではありますが、
読者にとっては
考え方として、
今までにない新しい角度
をもたらしてくれます。

今の立場がCEOや高官ではなく、
メガプロジェクトなんて
自分には関係ない。
と思う方も多いと思います。
しかしながら、
個人の人生における
メガプロジェクトは多く存在します。
例えば、
結婚、
家を建てたりリフォームする
転職する、
脱サラしてクレープ屋を始める
タトゥーや旅行など、
大きく複雑で野心的かつリスクが伴う
プロジェクトは、
企業にとっても国にとっても
個人にとっても大きな
プロジェクトだと言えるのです。

大事業に現れる失敗は
個人のプロジェクトに対しても
起きてしまう。
とは著者の警告です。
実際に、
単純なキッチンリフォーム計画が、
大混乱と数年の悪夢を生み出した
個人のプロジェクトも紹介されています。

一方、
ずさんなメガプロジェクト結果に対し、
金額的に工期的にも便益的にも
大成功を収めたプロジェクトも存在します。
当初の計画より
コストは安く、
完成は前倒し、
しかも、
予想を超える利益を生み出す
メガプロジェクトは、
一体何を行い、
そうでなプロジェクトとは
何が違ったのでしょうか。

個人のプロジェクトを
失敗させないために、
私たちはメガプロジェクトから
何を学べるのでっしょうか。
管理人的に特筆すべき点を
アウトプットします。

学んだこと:

ゆっくり考えすばやく動く

どこかの誰かが言いました。
「早く動き、早く失敗し、
 早く改善せよ。」
行動力の後にこそ
成功が待っている。
と言いたげたこの言葉。
金言のように聞こえますが、
この言葉を鵜呑みにするのは
ちょっと待ってください。

著者は、
早く始めたい衝動に
賢く争う必要がある
と言っています。
何でもかんでも、
素早く始めれば良い
という分けではないのです。

人間は何か問題が起こった時、
それを自分の頭の中で考えて
自分が持っている知識の中だけ
で答えを探そうとします。
そして、
自分が考え出した答えが
その全てだと勘違いしてしまうのです。
ヒューリスティックスと呼ばれる
心理現象です。

今、自分の目の前にあることが全て
と勘違いしてしまうと、
もうその他の事が目に入らなくなります。

直感がいつも正しいとは限りません。
分析と解析、検証を繰り返しさえすれば
正しい答えや取るべき選択が明らかになるのに
人は目の前にある事で、
物事の結果や問題の原因を
自分の中で勝手に決定づけてしまいます。

職場で新人がミスをした時、
なぜそのミスが起こったか?
の手っ取り早い答えが、
新人の能力が低かったから
としか考えられない場合、
その他の要因である
職場の環境や、
上司の指示の甘さや、
新人の教育環境などの要因は
簡単に見てみぬふりにされてしまうのです。

この思考法を踏まえれば
決定は早ければ早いほど良い
は間違いだと分かります。

幹部が部下から見せられた選択肢は、
本当にそれだけなのでしょうか。
もっと他に良い方法があるかも知れません。

上司自身が下した指示が、
上司の直感だけからくるものだとしたら、
それはプロジェクトを進めるには
考えの深さが足りないと言わざるを得ません。

ホフスタッターの法則
という言葉もあります。

人間とは
「私にはもっとできる」
と思い込んでしまう生き物です。
目の前の仕事・作業量に対し、
実際にかかる時間より
かなり「甘く」見積もる傾向
があります。

夏休みの1日目に立てた
宿題を終わらせる計画が
一度たりとも達成できなかった過去
を思い出すと、
なるほどと納得せざるを得ませんが、
これは残縁なことに
メガプロジェクトでも起きてしまいます。

前に進んでいるという「感覚」
が早く欲しい。
という問題もあります。

とにかく行動を起こして、
計画が進んみ、
作業がゼロではない事実
を欲しがった結果、
プロジェクトは
早く考え素ゆっくり動く
という間違った方向を
歩みだすことになります。

計画は煩わしい早く片付けたいこと
ではなく、
実行する前の欠かせない第一歩
なのです。

大きく複雑で、
野心的だがリスクを伴う様な
プロジェクトに取りかかる時は、

「コミットしないことにこそコミットする」

ことを覚えておくと良いでしょう。

経験を「もっともっと」取り入れる

最大、最長、最初、最速など、
これらの
まず私たちが一番だ
との考え方が基盤となってしまい
「経験」
がむしろ不要なものだ
と判断されてるプロジェクトが
あまりに多いと著者は警鐘を鳴らしています。

我が国が、
私こそが、
取り組む企画なわけだから、
それは
「誰かに真似できる事ではいけない」
と考えるのは危険な事です。
そしてこの思考こそ、
そのほとんどのプロジェクトの根底に
鎮座してしまっています。

視察団が海外を視察した後
嬉々として
「他の国にはありません」
「私たちの規模が最大です」
と報告するのであれば、
それはプロジェクトを進める理由ではなく
計画を先送りする理由であるべきなのです。

当然ながら、
世界初、世界で一番
となのつくプロジェクトには、
参考にできるデータが無く、
著者はこの現象を
経験の赤字
と呼んでいます。
ユニーク(唯一無二)であることは
さも良い事であるかのように見えますが、
プロジェクト失敗を
覚悟する必要があります。

世界初を実践し、
先行者利益を得られれば、
例え何年もかかって
プロジェクト自体が遅れたとしても
費用が計画より大幅に足が出ても、
大きな成功を収める事自体は
できるのでは無いのか?
と疑問に持った人もいるでしょう。

しかしながら、
先行者利益は
そのほとんどが幻であり、
利益が誇張され過ぎている
と著者は説明しています。

研究により
5000近くのパイオニア企業
を分析した結果、
現在、市場に生きながらえている企業は
半数(50%)だったのに対し、
パイオニア企業のフォロワーは
倒産率は8%でした。

早期に参入はあたかも有利に見えますが、
同時に経験が乏しいという
苦境を乗り越える必要が出てきます。

むしろ、
パイオニア企業の失敗から学んだ、
フォロー企業の方が実績は高いです。
誰よりも早く始めるよりも、
誰よりも早く真似をする
ファーストフォロワー
を目指すべきです。

プロジェクトには、
技術に溜まったの経験・実績、
人の歴史に溜まった経験・実績が
すこぶる効果を発揮します。

ここには、
かつての高度成長期にあった
日本の経済が得意としていた
「暗黙知」という言葉も出てきます。

スイッチを押せば扉が開く
などの簡単で形式的な
形式知ではなく、
長年蓄積された経験や実績を伴った
暗黙知は、
言葉では説明できない
その人の頭で理解している技術
を指します。

例えば、
自転車の乗り方も暗黙知です。
乗れない人に
言葉で説明しようとしても
上手くいかないはずです。

説明を聞いた上で、
自分自身で何度も転んで
乗り方を学ぶ。
という姿勢そのものが大事なのです。

経験を参考にするのは
暗黙知を取り入れる事に
繋がります。
プロジェクトメンバーには
経験者を組み込んだ方が
上手くいきます。

それができなくても、
失敗から学ぶ、
それを活かす。
を実現できる環境を用意すれば
プロジェック成功の可能性は
より高くなるはずです。

唯一無二だと思わないこと

・オリジナルではないかも⁉︎
日本に1億人の人間がいるなら
1億通りのプロジェクトが存在する。
もちろん、
私のプロジェクトだって
唯一無二のオリジナルのものだ!
と人は考えがちです。

が、それは本当でしょうか。
オリジナル性をアピールする前に、
数ある中の一つではないか
と認識する事が、
正しい予測とリスク管理
に大いに役に立つ。
と著者は説明しています。

・記者の失敗談
本書の例には、
とある記者が本を執筆した時の
失敗談が挙げられています。

政治的な大物の自伝を書くよう
会社からの指示であったと言います。
記者が記事ではなく本を書くのは
個人にしてみれば野心的で
立派なプロジェクトです。

この記者は、
本業が文字を書くことなのだから、
いつも記事を仕上げるペースで
計算をして、
本の出来上がるまでの期間を
1年間で仕上げられる
と予測したそうです。

しかしながら、
プロジェクトが始まってみると
計画は大幅に遅れ、
完成までには8年の月日がかかった
と記録されているそうです。

・能力ではなく予測が違うのだ
記者は自分を責めました。
当初の計画通りに進まないのは
自分に能力が無いからだ。
と勝手に結論づけて、
疲弊したこの記者は、
家族を路頭に迷わせる一歩手前まで
落ちぶれてしまったと言います。

・アンカリングに注意!
心理学には
アンカリング
と言葉があります。

最初に示された「数字」が、
その後の行動を縛ってしまう
現象を指します。

マーケティング戦略でも使われる
この心理学は、例えば、
「この商品は5個まで買えます」
と聞くと、
もっと欲しいと、
6、7個を請求してくる客はいても
いきなり1000個買いたい
と請求してくる客はいないものです。

最初に聞いた数は
その人のアンカー(いかり)となり
その後の思考や行動を縛ります。

記者が計画を立てし損じたのは
このアンカーが違っていました。
ジャーナル記事と伝記では
その内容も違えば、
当然ながら
完成までの見積り時間も
違いを加味するべきだったのです。

現実、この記者が、
伝記を書いたことのある「先輩」たちに
アドバイスを求めた所、
計画を3年も4年も過ぎていることに対し、
先輩たちは、
「伝記は完成までに
 5、6年かかるのは当たり前だ」
とアドバイスしました。

この記者が先輩たちのアドバイスにより、
能力が低くて遅れたのではなく、
そもそもの予測が根本的に間違っていた
と気づいたのは、
心も身体も疲弊し、
家族を破産寸前にまで追い込んだ後
の事だったと言います。

計画を立てる前に、
伝記のなんたるか
を調べておけば。
と思わずにはいられません。

・過去の同じような事を参照せよ
予測は軽視されがちです。
もし今から取り組むプロジェクトが
火星に住むための施設を作ったり、
民間ロケットを作ったり、
画期的な新エネルギイーの開発
などで無いのなら、
この世のどこかに
「似ているプロジェクト」
があるはずです。

オリジナルのプロジェクトであっても
予測は可能です。
全く同じではなくても、
キッチンフォームなら、
その例を調べることは
難しくは無いでしょう。

著者はさらに述べます。
プロのマーケターでなくても
似たプロジェクトを
調べることは可能であると。

インターネットや、
広告を調べても、
そこには商業的な施策が
めぐらさらており、
どの情報が正確で信頼性があるか
を判断するのは難しいかも知れません。

しかし、
例えば
会社の同僚や同級生、
家族や親戚や友人、
近所に住む人たちなどなど、
周りのコミュニティからでも
取ろうと思えば
プロジェクトの情報は
取れるはずです。

計画に時間をかける方が
成功には必須である事は
既に述べましたが、
この計画とは、
静的なものではなく、
動的なものである。
と著者はさらに指摘しています。

計画は、
会議室で座って行ったり、
頭の中で机上の空論を
作り上げることではありません。
計画とは、
自分の足で動いて、
情報を探しあて、
それを組み込む、
アクティブなものであるべきです。
経験者を探して
チームに組み込むのも有りです。
先人たちの情報や経験、
知識や技術と実績を手に入れれば、
成功をぐっと近づけることができます。

自分のプロジェクトが
唯一無二であるという思い込みや
アンカー心理には屈してはいけません。

おわりに:

先人たちの大失敗から
学ぶべき事は多いです。

結婚式や、家を建てたり、
キッチンをリフォームしたり、
会社を立ち上げたり。
プロジェクトの大小に違いはあれど、
私たちの人生とプロジェクトは
切っても切り離せません。
本書が大いに役立ってくれるはずです。

同時にうっすら感じたのは、
日本の技術の遅れの様なもの。
コロナ禍において、
中国や香港が、
9日で病院施設や入院施設を
準備できたのに対し、
原発一つ、
うまく機能させることのできない日本は
メガプロジェクトという面でも
世界と比較して遅れている様に感じたのです。

私たち一人ひとりが
本書を参考に、
各々のプロジェクトを成功させ、
それが合わさって、
将来の日本のメガプロジェクトをも
改善させていく。
そんな明るい未来が、
この本には詰まっています。

大樋町

大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw
目指せ実用書知識のウィキペディア!(暴言)

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