第159回【書評】チャッターから学ぶ【内なる声を味方につける】

読んだ本

はじめに:

頭の中で反芻される
「独りでするチャット」
がチャッターの語源です。

朝、目が覚めると、
「今から仕事に行くのか、、、」
と絶望的な気分になったことはありませんか?

俗に言う「朝方ネガティブ(朝ネガ)」に
私はほぼ毎日悩んでいました。
一日が終わってみれば、
なんて事はない、いつもの日だったのに、
なぜ朝はあれほどゾッとするのだろう。
もし朝ネガがなければ、
もっと毎日を
快適に暮らせるのではないか。

そう思って手にした
今回ご紹介の本は、
頭の中に思い浮かぶ思考
とは一体何者で、
なぜ存在し、
どう付き合っていきばいいのか。
を教えてくれる実践の書です。

結果、
朝ネガは改善されました。
頭の中の反芻思考を止めて、
思考を味方につけ、
人生を変えてしまいましょう!

学んだこと:

なぜチャッターは存在するのか:自己形成には必須の能力⁈

存在意義を知ることで、
朝ネガの悩みは、
半分以上解消されました。

頭の中の会話は、
1分間に約4000語、
処理されるそうです。
米国大統領のスピーチが、
一時間で6000語を基準に
作られている事と比べると、
実際に口に出す物理的な声より、
チャッターはよほどおしゃべりです。
※文字ではなく「語」で計算

この内なる声は、
そもそもなぜ存在するのでしょうか。
進化は、
生き残るのに有利な性質を選択します。
では、チャッターは人間にとって
どのように有利に働いたのでしょうか。

著者は、
内なる声があるおかげで、
「私たちはこの世界で活動できる」
と説明しています。

突然ですが、
脳はマルチタスカー
(複数の処理を同時に実行する者)
です。
例えば海馬は、
記憶を司り、更に、
空間把握にも必要な器官です。

海馬のように、
少ない資源を最小利用するため、
脳の中では一つの器官が
複数の役割を担っているのです。

ここで着目したいのは、
ワーキングメモリー
(作業記憶野)
です。

脳の最も重大な仕事は、
このワーキングメモリーを
機能させる事です。
ワーキングメモリーは、
人間を人間たらしめるため、
必要な情報を選り分け、
集中力を発揮し、
やるべきことを遂行できます。
ワーキングメモリーが
うまく機能することにより
社会に出て、
人として支障なく活動できます。

そして、
このワーキングメモリーこそ、
チャッターの影響を受けているのです。

ワーキングメモリーは、
言語機能と深く関わっており、
言語は、感情の発達と密接な関係です。
子供はよく独り子を言います。
見えない友人に話しかけながら
遊んでいたりするわけですが、
子供のチャッターは、
その言語能力が
徐々に備わってきたことを表します。
サピアウォーフの仮説にもあるとおり、
言語は、
自己を形成する重要なものでもあり、
自己を制御する上で必要なものなのです。

また、
自己制御に資する上で、
内なる声は、
心のシミュレーションにも
一役買っています。

内なる声は、
夢や目標の達成まであとどれくらいか
ことあるごとにひょっこりと現れ、
言語的思考を伴います。

実際、
目標に関わる無意識の声は、
内なる声でも最も頻繁に
私たしの心を占めるものだと
研究で分かっているそうです。

言語は、
その人にとって
自分を人生の主人公にする
重要な役割を担います。

人は内なる言語により、
自らの価値観と願望を理解し、
継続的なアイデンティティを形成し、
逆境を乗り越えるのです。

いやはや。
朝ネガやチャッターが、
自分の存在意義や、
自己形成に必須とは驚きの事実でした。

しかし、
必須である事と、
それが問題にならないという事は
イコールではありません。
必要で、
進化の過程で無くならなかったからこそ、
現代人に取っては、
問題も出てきます。

チャッターが
どんな時に問題になってしまうのか?
どんな問題にならのか?
次章で見ていきましょう。

その問題点:チャッターによる弊害

①反芻思考が人を疲弊させる
人間の脳には、
思考と行動を思い通りに操作する
会社のCEOの様な存在
「実行機能」
というものが搭載されれいます。
額とこめかみの背後に存在する
前頭前野がそれを司ります。

実行機能がうまく機能することで
人は
不要な情報をカットしたり、
集中したり、
想像的になったり、
自制心を働かせたりできます。

しかし、
実行機能には「容量」があり、
よく「マジックナンバー4」
と呼ばれています。

もし
子供にお使いを頼んだり、
部下に仕事を依頼する場合、
依頼数は4個以下にすることを
強くおすすめします。

なぜなら、
脳はマジックナンバー4、
すなわち、
脳の中に保持できるユニットは、
3〜5個だからです。
かつては5〜7個は保持できると
言われておりましたが、
そんなに多くのことを
私たちは覚えておくことができないし、
処理することもまた不可能であると
科学は解き明かしました。

言わずもがな、
心の中の独り言チャッターは、
この容量を圧迫してしまいます。

思考が反芻することより、
例えばプロのスポーツ選手が
スランプに陥ってしまったりします。

②人に嫌悪感を抱かせ、人を遠ざける
チャッターは、
負の感情をである場合が多いです。
チャッターが頭を支配してしまうと、
人はそれを他人に話さない訳には
いかないようです。

頻度を超えると、
「不安の相談」は「愚痴」へと
様変わりしてしまいます。

チャッターによる不安や悩みを
周りの友人・恋人などに打ち合える行為が
結果的にしつこくなり、
周囲の人間から毛嫌いされてしまう。

更に、
負の感情が大きいほど、
それを口にする頻度は多くなります。
過去に、
頻繁に自分の身に起こった事も
その何年にも渡って、
周囲の人に愚痴を言い続けます。

「強い感情は、
 ジェットエンジンの燃料の様に作用し、
 他人と情報を共有するよう
 人々を焚き付けるのだ。」

愚痴は人を遠ざけます。
内なる声を放っておくと、
いずれ孤独を招いてしまうでしょう。

③身体的ダメージまで残す
チャッターが反芻することで、
精神的に参ってしまうのは
想像しやすい結論ですが、
管理人が驚いたのは、
チャッターが
「DNAの発現」
にまで影響することです。

人間を方程式にすると、
遺伝子+環境=私
と表すことができます。

かつての遺伝子学の世界では、
『環境』は、
人の性格や人生には関係ない。
と思われていましたが、
現代では覆っています。

人のDNAとは、
遺伝子の奥に鎮座するピアノ
のようなもので、
どの遺伝子が発現するかは
どの鍵盤が押されるか。
で決まるそうです。

どの鍵盤が押されることになるかが
まさに環境によるところだったのです。

更に突き詰めると、
環境の中で、
どのような内なる声を形成するか。
がDNAの鍵盤、ひいては
その人の人格や人生を決めていきます。

ネガティブ遺伝子を持っている人も、
その人の環境とチャッター次第で、
発現していない人もいるのです。

ネガティブ感情は、
それ自体が負債ではありませんが、
長期化すると人に害を及ぼします。
チャッターを制御することは、
人格そのもののコントールを意味し、
その者の人生をも変える可能性を
秘めているのです。

チャッター解消のテクニック(抜粋)

心の声を鎮めるには、
どんな手段があるのでしょうか。
研究が進んだこの分野では、
いくつもの優秀で効果的な解決策が
発見されており、
その効果を遺憾なく発揮しています。

本書では、
チャッターを克服し、
苦境を乗り越えた人にも
焦点が当てられています。
彼らが取り組んだメソッドでも
特に効果がありそうで、
管理人が学びを得た方法を
本ブログでは取り上げてみます。

傍観者の目を手に入れる

何か強い負の感情を伴うチャッターが
頭を支配し始めたら、
頭の中の光景を、
自分の目で眺めてはいけません。
この状態を埋没者と呼びます。

そうではなく、
ちょっと離れた距離から、
他人の目線で自分を観察する。
という事をやってみて下さい。

もし何か友人とトラブルを起こし、
それが負の感情となって自分を
支配し始めたら、
友人と口論となった場面では、
自分と友人2人の姿を、
物陰から眺めているところを
想像するようにするのです。

鷹の目を持つ。
壁に止まった蝿の目で見る。
など、やり方は様々ですが、
基本的に
「当事者にならない」
事を心がけて、
チャッターと向かってみて下さい。

この状態が「傍観者」と呼ばれ、
内なる声に口輪する方法だ。
と説明されています。

更に、
もし負の感情度が高い場合、
頭の中のイメージを「小さく」してみましょう。
スマホで動画をスワイプして、
小さくする様に、
頭の中のイメージも小さくし、
取るに足らないものに縮小してしまうのです。
すると、
チャッターを止める効果も高まります。

日々、訓練すると、
息を吸うように、
他人の目線で脳内イメージを
再生できるようになるそうです。

ただ、この方法は、
効果が高いものの、
慣れないと集中力が必要な事です。
もし、すぐさま効果を発揮したいなら、
以下の方法を試してみましょう。

「一人称を使わない」メソッド。
という物があります。

自分の名前で自分を読んだり、
自分に対して二人称(あなた)と
読んだりすることで、
簡単に傍観者の目を
手に入れることができます。

この方法では、
効果を発揮するまでの時間が
たった1秒
です。

しかも、この方法は、
脳は実行機能を圧迫することなく、
効果を発揮します。
集中力を取り戻すために
チャッターを防ぎたいわけですが、
もしこの「一人称を使わない」方法で
集中力を持っていかれるなら
あまり意味はなかったでしょう。
脳作用的には最も少ない容量でもって、
チャッターを防いでくれる
優れもののメソッドを
使わないてはありません。

日常生活に置いて、
もし間近にストレスのかかる問題が
待ち構えているなら、
着手する時は、
「私にできるか?」
ではなく
「大樋町!(管理人名)君にならできる!」
と自分の名前で、
自分に話しかけてみて下さい。

傍観者の視点は、
ストレスを脅威から挑戦に変える
力を持っています。

書いてみよう!

チャッターはなぜ存在するか?
を既に見てきた通りです。
内なる声は、
自分に注意を即す、
警報器でもあるわけですが、
それをそのまま「アドバイス」として
受け取る為には、
脳内で傍観する必要がありました。

次は、
「脳内」で捉え直すのではなく、
物理的な方法で、
チャッターに対応します。

その方法とは
「書く」ことです。
筆記開示
(エクスプレッシブ・ライティング)
と呼ばれる方法で、
自分と思考との間に距離を取る。
のに大いに役立ちます。

やり方もシンプルで、
ルールはほぼなく、
ただひたすらに、
頭に思い浮かんが事を
ノートは手帳に書いていくだけです。

思考が物理的な文字として
自分の目の前に形成されることで、
客観的に思考を捉え直すことが
できるようになります。

SNSなどだと、
否定的な意見が返ってきてしまい、
書くこと自体を止めてしまう
可能性もあるので、
おすすめはやはり、
ノートなどに書く方法です。

③自分用の顧問団を作る
共同反芻という言葉があります。

人は感情的な高ぶりがあると
それを人に話さずにはいられません。
問題やストレスを、
聞いてくれる、語れる存在が自分にはいる。
という思いは、
確かに心の支えにはなりますが、
チャッターを消すことと
イコールではないのです。

と言うのも、
友人などに対して問題を打ち上げた時、
話し手は「感情的欲求」を優先してしまう。
というバイアスを持っており、
周りにことの成り行きを話すことで、
嫌な思い出を追体験し、
聞き手はより具体的に質問することにより、
追体験を「扇動」してしまうのです。

負の感情は心の中で繋がっています。
これを「観念連合説」と言います。

もし「猫」と言う言葉を耳にした時、
猫という文字だけではなく、
姿形、鳴き声、仕草、
飼ったことがある人ならペットとの思い出
など、
数珠つながりで
思考が頭に湧くこと現象のことです。

この観念連合は、
嫌な思い出にも起こります。
一つ嫌な思い出を思い出すと、
連鎖的に過去の思い出したくないこと
まで心を支配してしまいます。

ここで真に必要なのは、
認知的欲求です。
その時どう思ったか?
どう感じたか?
聞きては自分の意見に賛同してくれるか?
などの、感情的欲求に流される事なく、
もっと『現実的な解決策』を
模索するべきなのです。

より具体的に何をすべきか?
この問題点に着目し、
それを解決できる人や集団から、
アドバイスをもらうと効果的だし、
それをもらえる環境を整えておくことも
その後チャッターを改善することに
役立つでしょう。

自然ってスゴイ

都会でも緑地化が進むように、
人は本能的に自然が重要な存在である
事を知っています。

アメリカでは、
半分スラム街と化した、
16階建ての高層マンションが
28棟並び、
当時、世界最大と呼ばれた団地において、
自然による人間への影響が調査されました。
結果、
より樹木の多い地域に
住んでいる黒人の方が、
問題の改善に前向きで、
健康的で、
集中力も高く、
幸福度も高い。
ということが分かりました。
アフリカ系アメリカ人により、
麻薬をはじめ犯罪の巣窟と成り果てた
団地においても、
自然の力が発揮されるのです。

このように、
自然には治癒力があり、
アンチエイジングにも効果があり、
更には集中力を回復する力まで
持ち合わせます。

先に見たチャッターの解決策、
傍観者の目で見る事、
書く事、
顧問団に打ち明ける事などは全て、
集中力を要すことでもあります。
消費した集中力を
回復するという意味でも
自然を取り入れることは有効です。

更に更に、
自然の中で過ごすと、
チャッター自体が現象する。
という効果まで実証されています。

身近に自然が無い人もご安心を。
二次的自然からでも効果は発揮される。
と著者は説明しています。

画像や動画、音楽、観葉植物など、
自分で準備した自然でも、
上記の効果が得られるので、
是非是非取り入れてみて欲しいです。

おわりに:

チャッターは、
そもそもそれ自体が、
自分に大事なものは何か?
を教えてくれるツールである。

更に、
チャッターはテクニック次第で
抑えることもできる。

これらの知識と技術を得れば、
もう朝ネガにも苦しまなくて良いです。

感情を手放す方法には、
認知行動療法(ACT)
も良いとされますが、
今回本書から得た知識は、
「チャッター」に対する
具体的アプローチですので、
反芻する内なる声
にお悩みの方は一読の価値ありです。

「痛みがあるにも関わらず意味がある。
ではなく、
痛みがあるからこそ意味がある。」
本書の言葉は良い薬です。

大樋町

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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
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私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw
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