はじめに:自分にとって一番の人生「OPTION A」が頓挫したらどうする?
本書の著者シェリル・サンドバーク氏。
彼女は、
幼い二人の子供を育てる母親であり、
FacebookのCOO(最高執行責任者)であり、
夫を事故で失った悲しい経験の被害者でもあります。
誰もが自分の一番望んだ未来、
バラ色の人生「OPTION A」を過ごせるとは限りません。
むしろ、
人生のどこかで、
夢を諦め、挫折し、喪失し、妥協して生きています。
更にそれらは
「余儀なくされたもの」かも知れません。
不慮の事故、予期せぬ病気、伴侶との死別、降りかかる災害など
最善の選択肢「OPTION A」を遮るものは数知れません。
理不尽な不幸や挫折だってあるかも知れないし、
良かれと思ってやったことが
取り返しのつかない失敗に繋がる事もあります。
なぜ自分だけ?と悲嘆に暮れたまま
人生に燃え尽きてしまう人もいる中、
それでも「レジリエンス」を発揮して、
人生を取り戻すどころか、
悲嘆をきっかけに「成長」する人たちがいます。
共同著者のアダム・グラント教授は
サンドバーク氏の友人にして、
生きがいや意欲を研究する心理学者です。
彼独自の知識とやり方で
サンドバーク氏を助けていきます。
自分でも想像していなかった、
人生の第二の選択肢「OPTION B」を
選択しなければならなくなった時、
人はどう生きるべきか?
学んだことをアウトプットします。
学んだこと:
レジリエンスは手に入れるものと意識する
失敗とは、転んだことではなく、
ひざを着いても
そこから「起き上がらないこと」が失敗である。
この起き上がる力のことをレジリエンスと言います。
直訳すると
回復力、弾性(しなやかさ)
などと訳されます。
アダム・グラント教授は強調します。
レジリエンスは、
今どれくらいあるかではなく、
今からどれだけ高められるかの方が大事である。
めげない、へこたれないといった、
ただの精神論ではなく、
立ち上がる力を育むことも含めて
レジリエンスと言います。
半年踏ん張る
逆境に出くわし、悲嘆が最高潮の時期を、
心理学では「するどい悲嘆」と呼びます。
ただし、半数以上の人は、
6ヶ月後
には半数以上の人が、このするどい悲嘆を乗り越えている。
という事実があります。
トラウマ級の経験をしてもPTSDに陥るのは実は15%未満
戦友が眼の前で地雷に吹き飛ばされた経験をもつ帰還兵、
テロで家族「全員」を失った被害者など、
トラウマ級の事件に巻き込まれる人は数しれませんが、
実はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するのは
全体の15%に満たないとのデータがあります。
しかも、
半数以上の人間はポジティブな経験を積むこともできています。
人は思った以上に強い生き物なのかも知れません。
三つのP 自責 普遍 永続を考えてみる
レジリエンスの強い人は、下記の3つのPにも強いです。
Personalization(自責化):自分だけのせいで失敗したと思い込む
Pervasiveness(普遍化):一つの失敗が人生全体に波及すると思い込む
Permanence(永続化):失敗が永遠に人生に影響すると思い込む
誰もが陥りやすいこの3つPを意識するだけでも
レジリエンスは高まります。
もっと悪いことだったかも知れないと想定してみる
逆境にいると、まるで自分が世界のどん底にいるような気がします。
そこであえて、
もっと悲惨な目に合っていたかも知れない。
と想像すると、気持ちが落ち着きます。
サンドバーク氏の夫は
スポーツジムで癲癇(てんかん)を起こし亡くなりました。
サンドバーク氏は
「もし癲癇が車の運転中に起きていたら」
「夫を亡くした上、私まで癌だったら」
などと想定することでレジリエンスを高めています。
大丈夫じゃないけど、正直に伝えられて嬉しい。と言う
逆境に身を置く人は苦しい立場を正直に話せないといいます。
友人や家族に大丈夫かと聞かれると、
反射的に「大丈夫」と答えた事のある人は多いはずです。
これでは自分の殻に閉じこもってしまうばかりです。
次に心配された時には正直に気持ちを話してみると
気持ちがとても楽になります。
「大丈夫じゃないけれど、その気持を正直に伝えられて嬉しいです」
自分も楽になり、相手にも笑顔になってもらえます。
自分の価値を人生最大のあやまちで判断しない
3つのPのひとつ「永続化」の対策でもあります。
取り返しのつかない失敗をしたとしても、
その失敗があなたの代わりにはなりません。
それは失敗でしかなく、あなた自身を指しません。
これは自分が他人を判断する上でも
必要な考えだと思います。
感情をジャーナリングとラベリングする
気持ちが落ち込んだらそれを書き出してみる。
これがジャーナリングです。
心の中を実況中継(ジャーナル)して
その思いをノートやメモ帳に書き出します。
心の底から沸き上がってくる思いを
おもむくままに全てしたためてみます。
すると、
感情が目で見える形に現れるので、
脳は冷静さを取り戻し始めます。
悩みや不安はそのまま心の中で
くすぶらせてはだめです。
悩みや不安を思い立ったら
ノートに書き出してみましょう。
更に、ネガティブな感情に「ラベル」を付けてみます。
これがラベリングです。
心がモヤモヤするなど曖昧な表現ではなく、
具体的に言葉に落とし込むこみ、
モヤモヤを実体化すると感情を処理しやすくなります。
最悪な気分だ。
ではなく、それはなぜなのか?
一人ぼっちで寂しいから。
などと具体的にラベリングしてみると
自分の曖昧な感情に対してコントロール感が生まれます。
リフレーミングを身につける
補聴器をからかわれた子が親から授かった処世術です。
その子供は、
からかわれてもユーモアで切り返すことで、
「自分が自分の障害にどう反応するかで、
人の反応が変わることを知った。」
と言います。
周囲から自分がどう見られるかは、
自分で決めることができる。
そう気づけば、
失敗をからかわれても、
リフレーミングして
笑いとばすこともできると思います。
道徳的高揚
レイプ犯に赦しを与える被害者など
悲嘆の原因になった者に赦しを与える行為や
非凡なまでに高潔な行動を見ると、
胸がジワっと熱くなり、人は高揚感を感じる。
これを道徳的高揚と呼びます。
理不尽な現実を敢えて赦してみる。
私には何か惹かれる言葉に聞こえました。
ベン・テスティング
著者はFacebookのCOOです。
当時、社内にはベンというインターン生がいました。
ベンは、サイトがダウンしないよう対策を講じており、
ある日、不具合をデバックするために
意図的に障害を起こそうとし、
誤ってFacebookを
30分間ダウン
させたことがあったそうです。
本来ならすぐさま解雇になるところしょうが、
Facebookは、ベンを解雇する代わりに、
サイトダウンはやり過ぎだが、
もっと頻繁に障害を発生させよう
と宣言したのでした。
この失敗を逆に利用して
企業を強くするためのバネにする。
という考えをFacebookでは「ベン・テスティング」と呼び、
ベンは正式に社員として採用されてもいます。
強い企業はレジリエンス力も高いです。
スイッチを準備する
ストレスに関する実験において、
被験者には
集中力が求められるパズル
に挑戦してもらいました。
Aグループの実験では、
パズルに挑戦中、
被験者にランダムな間隔で発生する不快な騒音
を聞かせました。
すると、
被験者は見るからに集中力を欠き始め、
ミスを連発、心拍数と血圧も上昇し、
パズルを投げ出してしまう被験者もいました。
一方Bグループの実験においては、
実験の内容は全く同じなのですが、
「このスイッチを押せば、いつでも騒音は消せる」
との説明とボタンを付け加えてパズルに挑戦してもらいました。
すると、ボタンを与えられた被験者たちは
冷静さを保ち、ミスが少なく、
いらだちを見せることも少なかったのです。
更に驚くべきは、
そのスイッチを押した者は「一人もいなかった」
という結果です。
騒音を止めたという事実からストレスが減ったのではなく、
止められるという「意識」が違いをもたらしました。
何かとてつもないストレスにさらされる時には
抜け道となる「スイッチ」を準備することは
逃げではなく「挑戦」を助けてくれます。
ユーモアを求める
自分がユーモアであることも
周りにユーモアを求めるのも有効です。
手術後、患者にコメディ番組を見てもらうと
鎮静剤の使用量が25%も減少するそうです。
戦地にいても、
ユニークさを欠かさない兵士は
ストレスにも強いとのデータもあります。
結婚生活において、
夫婦間にユニークさやユーモアがあると
その後離婚の可能性が低くなります。
進化論的な説明をすると、
ユーモアを聞くような環境は
その状況が安全であることのシグナルで、
ユーモアは心拍数を下げ、筋肉を弛緩させます。
笑いはストレスをそれほど驚異には
感じなくさせる効果があるのです。
おわりに:
逆境から立ち直るためのアドバイスは
根性論や精神論になりがちなところ、
本書では、
被害者の実際の経験談と
その被害者にアドバイスする
心理学者による客観的なデータや手法
からレジリエンスを学び取ることができます。
人とは案外たくましい生き物のようです。
また、
レジリエンスを発揮するためには、
自分が苦境に立たされてから学び始めるのではなく
予めレジリエンスを学んでいる方が
苦境に対処しやすいとのこと。
OPTION Bを余儀なくされても
また私は立ち上がれるのだと
確信を深める一冊となりました。
大樋町
読書もいいけど、「聞く」のもおつなもの👇👇👇
ブログ村のアイコン押下で、管理人のやる気がアップする仕様ですw
コメント