第239回:変化を嫌う人を動かすから学ぶ

読んだ本

はじめに:

なぜ新しいアイディアは
すぐには受け入れられないのか?

マーケティングに欠かせない
消費者に変化を受け入れてもらい
新しいアイディアや商品を
繁栄させるにはどうすれば良いのか
に言及した本書。

人は往々にして、
未知より既知を好みます。

無人島に一人で不時着した
と想像してください。
少し青いが明らかにバナナ

茶色のギザギザした
果実か野菜かも分からない植物の実。
あなたならどちらを口にするでしょうか。
答えは明らかにバナナの方です。

私たちの祖先は、
既知を優先したからこそ
命の危険が潜むような場面で生き残ったので、
その本能が根深く、
現代においても
人の行動を支配してしまいます。

新しいアイディアがどんなに
革新的で新しく画期的であっても
「だからこそ」人はそれらを
受け入れられないのです。

一方で、
ではなぜテスラー社の車の
「ファルコンウィングドア」の様な
奇抜なデザインやアイディアが
人々に受け入れられているのでしょうか。

そこには
変化を受け入れさせる方法
を取り入れているからに他なりません。

本書には、
変化を嫌う人の原因が
大きく4つ示されています。
・惰性
・苦労
・感情
・心理的抵抗
の4つです。

新しい物事を導入したい時、
人は往々にして、
新しく導入する物事の
「良い所」を説明して、
そのまま終わりがちです。

今使っているものより、
新しいものの方が
どれほど素晴らしいか
を仕切に話したがります。

しかしこれだけでは
人に変化をもたらすことは
できないのです。
成功は、
受け入れる側の「抵抗」を
どれだけ減らせるか
にかかっています。

かつてパソコンの黎明期、
スティーブ・ジョブズは、
聞き慣れないPCの専門用語を
デスクトップ、フォルダ、ドキュメント
などと聞き慣れた言葉と
絵柄に変えることで、
新しいパソコンというアイディアを
消費者に受け入れてもらう事に成功しました。

この戦略は「惰性」に対して
取られた施策の一つですが、
このように、
やり方に一工夫を加えると、
人は抵抗を感じにくくなります。

今回は、私が特に目から鱗であった
抵抗を無くして、
新しいものを受け入れるテクニック
をアウトプットします。

学んだこと:

惰性を攻略する

変化を受け入れようと思った時、
その抵抗となるものの一つ。
それが「惰性」です。

人は未知より既知を好み、
変化より不変を好みます。
これは人間の本能に基づいた
生命をかけた働きであるので、
抗うのは難しいです。

人類がかつて動物と近い存在で、
まだサバンナの大自然の中で、
弱肉強食の世界が全てだった頃、
突然環境が変われば、
それは群れの全滅を意味しました。

どこに食べ物や水があるのか?
どこに敵が潜み易いのか?
襲われた時の逃げ道はどこか?
などなど、
分かっておかなければならない事を
変化により失えば、
それは死をも意味したのです。

よって、
今現在生きているのなら、
昨日と同じ今日、
今日と同じ明日を過ごせば
生きていける。
と脳と本能は理解します。
ゆえに
人は変化より惰性を好むのです。

ではどうやって対策をすれば良いのか。
・変化を小さくして繰り返す
・比喩(アナロジー)を使う
・典型的なものに置き換える
が効果的です。

一つ目は
「繰り返す」効果について。
何度も目にすると、
それに愛着が湧く。
という心理効果です。
単純接触効果とも、
発案者の名前を取り、
ザイオンス効果とも呼ばれています。

そんなの当たり前じゃん!
と言われそうなこの効果。
しかし、侮るなかれ。
その効果は絶大です。

例えばエッフェル塔の例です。
今では観光地として
皆に慕われるエッフェル塔ですが、
驚くことに、
建造された当時は
「景観を損なう」
と揶揄され倦厭対象だったそうです。

しかし徐々に、
皆が「繰り返し」目にすることで
愛着心が高まり、
今ではパリが代表する観光名所
になりました。

倦厭対象であったものを
国の代表観光地にすら変えてしまう。
繰り返しの力には
それほどの効果があります。

周りの友人を見てみましょう。
かつて、
地獄の訓練を潜り抜けた
部活の同期とは
一生の繋がり芽生えた。
と誰もが思っていたはずです。

しかし、
実際のところは、
自分の近くに住んでいる友人
との繋がりが一番強い
という調査結果があります。
なんともシュールですが、
繰り返しにはそれほどの力があります。

惰性による変化嫌いを防ぐ方法
2つ目はアナロジー、
比喩を使う方法です。

庭のルンバの様なもの、
犬の飼い主のユーバーの様なもの、
などなど、
初めて世に出る製品やサービスも、
比喩を使う事により、
途端に分かりやすくなります。

新しいものも、
既知のもの
に感じることが出来れば、
変化の抵抗は起きにくいです。

スティーブ・ジョブズは、
難解なパソコン用語を、
デスクトップやフォルダー
などの見慣れていて
使い慣れた言葉で表現したことで、
手作業からデジタルの世界を
人類にもたらしてくれました。

彼がいなければ、
ひょっとしたら私たちは
惰性の望むまま、
パソコンなんて物は受け入れず、
手書きで書類を作り、
インターネットにはほど遠い生活
を送っていたのかも知れません。

3つ目は、
典型的なものに置き換える
という方法です。

画期的なアイディアも、
見た事のある形ややり方
なら受け入れてもらいやすいです。

テスラー社のイーロン・マスクは
車の構造を
まるで変えてしまいました。
ガソリンが必要な車から
電気自動車への変化。
それは画期的な構造ではあるものの、
従来とは全く違うシステムを
顧客に受け入れてもらう必要がありました。
彼はどうしたのか?

答えは簡単、
見た目は変えなかった
という事です。
変わったのは中身だけで、
ガソリン車と見た目は
ほとんど変えなかったので、
顧客は電気自動車を受け入れやすかった。
との調査結果があるのです。

サイバーパンクなデザインは
テスラー社の電気自動車が
広く受け入れられてから
発案された物です。

新しいアイディアを
受け入れたい時は
典型的な形
に近い形で提供したり、
自分に導入してみましょう。

もしチャットGTP(オープンAIの新技術)
を受け入れ難いなら、
Googleでインターネット検索すると
検索結果と同時に出現する
Googleの回答に似た様なもの
とアナロジーしても良いでしょう。
※個人の意見です。笑

労力を消す

変化を嫌う人が感じる
次の抵抗は「労力」です。
新しいアイディアと出会った際、
それを受け入れると発生する
労力が大きければ大きいほど、
当然ながら
変化は受け入れられる事はありません。

この労力と呼ばれる抵抗は
2種に分けられます。
苦労と茫漠感(ぼうばくかん)
の2種類です。

苦労とは、
作業の量を指します。
10枚のレポートより
100枚のレポートの方が
苦労が多いです。

もう一方の茫漠感とは
何をすれば分からない労力
の事で、
・何から手を付けていいのか
・そもそも何をすればいいのか
などが分からないと、
人は変化を受け入れません。

茫漠間を解決するのが
・小さいステップにすること
・ロードマップを明確にすること
の2つの方法です。

米国の例を見てみます。
選挙に参加してほしいとの変化を
国民に受け入れさせるには
どうすれば良いのでしょうか?

様々な手法が試されましたが、
ポスター上で、
選挙へ行くメリットを訴えたり、
選挙へ行く事の高尚さを伝えても
有権者は選挙へは出向きませんでした。

一番効果があったポスターは、
選挙には、
いつどこへ行けばいいのか?
が示されたポスターです。
そのポスターを見れば、
一発でどこに行けばいいのか?
いつごろ選挙に行けばいいのか?
が分かるので茫漠感が解消されたのです。

また、
選挙に関する電話調査の際、
あなたはいつ選挙に出かけますか?
それはどの様な方法ですか?
と質問し、回答を得た場合、
その回答をした人は選挙に行く
という事も分かっています。

より具体的に
いつ、何をするか
を思考することにより、
驚くほどの行動力を呼び出せるのです。
変化を求める場合、
「分かりやすさ」と「具体性」
を全面に押し出しましょう。

そしてもう一つの労力、
「苦労」
は「シンプル」にする
事で解決できるでしょう。

変化にたどり着くまでの道のりを
徹底的にシンプル
にします。

最近のSNSでは、
従来の初期設定にあった、
・ユーザーアカウントの作成
・新しいパスワードの設定
・メールアドレスの入力
・そこに送られてきたメールで
 入会の手続きを行う
などの煩わしい手続きが
「全てなくなっている」
ことに気づいたでしょうか?

最近では、
SNS上に一つアカウントを持っていれば、
そのアカウント情報を移行することにより、
モノの数秒で新たに他のSNSを
始める事ができます。

もし何か新しいことに挑戦したいなら、
その挑戦を始めるまでの過程を
シンプルにしてみるのが良いでしょう。

もし
スポーツジムに通うのを習慣化したいなら、
当日になってから
出かける準備するのではなく、
前日からジャージを着て寝る、
靴やプロテインドリンクは
前日に準備して鞄に詰め込み、
玄関においておく
などの準備を予め終わらせておき、
目覚めたら「出かけるだけ」
の状態にしておくのは良い方法です。

どの時点で
自分が面倒くさい
と感じたかを記録し、
それを取っ払うことが有効でしょう。

変化させられる事自体を人は嫌がる

アイディアを受け入れるとは、
ある意味で
人に対して指示をして、
その指示を無理強いさせる
と置き換えることができます。

どんなにアイディアが
素晴らしいものであっても、
この「無理強い」自体に反発する事を
心理的反発(心理的リアクタンス)
と呼びます。

このリアクタンスをなるべく抑え、
新しいものを受け入れてもらうには
どんな方法があるのでしょうか。

本書には、
結果が出てしまってから
後付けで押し付けるのではなく、
最初から変化自体を自分で考えてもらう
「コ・デザイン」や、
指示をするのではなく、
質問するという方法で物事を進める
「イエスを引出す質問」など
優れば方法が記載されています。

本ブログではその中でも
コミットメントカード
に着目してみます。

アメリカフットボールの
伝説的監督と歌われる、
ボブ・ラドスール氏
をご存知でしょうか。

彼の率いるチームは
1992年から2002年までの
実に10年間もの間、
優勝をキープしました。

初優勝を得ることと、
それを持続することとは
全く違う努力が必要との事ですが、
ラドスールはどのように
選手を導いたのか?

その答えが前述した
コミットメントカードです。

このコミットメントカードの
ルールは簡単で、
フットボールの練習を始める前に、
この1週間で
「何を重点的に練習するか」
その後、
「何がうまくいき、何ができなかったか」
をカードに書き込むだけです。
1週間の期間に限らず、
1日の目標、1ヶ月ヶ月の目標でもいいでしょう。

ポイントは、
チームメイト内でペアを組み、
お互いのカードを見せあってから
練習を始める事です。

目標を具体的に立てて、
それを告知し合う事で、
選手たちにとって練習は、
監督から「無理強いされること」
ではなく、
「自らが進んでやること」
に変わります。

心理的反発は、
指示する事ではなく、
質問することで解消できます。
さらに、
その質問すらも自発的にすることを
『自主質問』
と言います。

コミットメントカードは、
自分で目標を立てて、
チームメンバーにその目標を語る事で、
あくまで『自主的に』質問を投げかけ、
それを宣言する事になります。

誰かに言われるでなく、
自分で自分に質問し、
自分で決める。
それを意識したコーチングは
よりチームの成果を高いものに
してくれるはずです。

ここからは私見ですが、
これは個人にも言えることだと思います。
テストで良い点を取りたいなら、
勉強を指示される前に、
自分から目標を決める
と言う事に飛び込んでみる。
そしてそれを友人に宣言してみる。
すると結果は、
流れに任されるよりも良い結果となる。
そんな気がします。

おわりに:

変化は恐ろしいものではなく、
それを好んで招く方が、
物事の成果は高い様です。

一度ルールを決めたら、
それをずっとやり続ける。
継続は力であるものの、
そのやり方に改善点がないか
変化を取り入れるのもまた
「力」です。
現状維持が大好きな私には
目から鱗のメソッドばかりでした。

また、
世の中には変化を嫌う人の方が多く、
逆に言うと
変化を受け入れられる人
と言うのはそれだけで、
相対的にヒエラルキーの上位に
行けるのではないか。
と思わずにはいられませんでした。

変化とはそれほどの力があります。
本書を参考にすれば、
今までの人生とは
違う扉が開くことでしょう。

大樋町

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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw
目指せ実用書知識のウィキペディア!(暴言)

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