第51回 【書評】ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのかを読んで【50年の歴史をもつ研究と編み出された対策】

読んだ本

はじめに

古代エジプトのメンフィスから現代のニューヨークまで。
病院の病室から証券取引所の立合い所に至るまで。
あらゆる場所に蔓延している「先延ばし」
をどうにか対策できないだろうか?

と著者と全く同じ気持ちで手に取った本です。

古代から続くこの厄介な先延ばしについて、
現代までにそれなりの研究が進んでおり、
効果的な対処法も確立されています。

なぜ先延ばしが起こるのか?
にも触れながら、
「先延ばさない」ための対処法
をアウトプットします。

本の概要

面倒くさいから。
と言ってしまえばそれまでではあるのですが、
面倒くさいという感情をもう一歩踏み込んで分解し、
3つの原因
から先延ばしに対してアプローチしていきます。
本書の内容の中でも
管理人が超おすすめの対策方法を抜粋しています。

著者【ピアーズ・スティール】

カナダ・カルガリー大学ビジネススクールの教授。
まさに先延ばしをテーマにした研究で博士号を取得した
先延ばし対策のプロフェッショナルです。
後悔すると分かってるのに、なぜヒトはなぜ先延ばしてしまうのか。
「私は先延ばしの研究者、実践者として長年の経験がある」
と豪語する、真面目一辺倒ではない、
ユニークな文章が特徴的な教授さんです。

学んだこと【先伸ばさないには?】

原因1:悲観的と楽観的のバランスを取らないと先延ばしする

悲観的な人は先延ばしをします。
自分で導き出してしまった、
『どうせ私にはできない。』
との思いから、
やるべき事に着手できず
先延ばししていきます。

悲観的な人に対する50年以上の研究により、
効果的な対策が3つあります。

成功の螺旋階段

小さな一歩も、成功です。
仕事に行こうとスーツに着替える。
これしきの事でも、
できない人には出来ません。
立派な成功です。
成功と認識するのです。
そして、小さな成功を積み上げていく事が、
先延ばしを防いでくれます。
今日の成功が、翌日の一歩目の時に、
優しく背中を押してくれます。
自分が成した成功を数えてみましょう。

スーツに着替えたら、
よし成功!
と、自分の達成した事を
認識して、ステップバイステップで前に進みましょう。

励ましてくれるヒトやモノ

自分と似た人・似た環境で育った人
成功に触れてみましょう。
また、
自分を応援してくれるヒトやモノ
を探してみましょう。
実際の周りにいる人でも、
その人が書いた本などでも良いです。
励ましや応援は、
力強く背中を押してくれます。

実際のヒトでなくともオッケーです。
むしろ、友人の少ない管理人には、
ここがミソ。

自分と似た人、似た環境で育った人
の成功ストーリーや本を探して、
読んでみましょう。

まるで、自分が励まされているかの様に、
重い腰を上げることができます。

メンタルコントラスティング

今回取り上げている本書には、
以前、本ブログで紹介してした
WOOPの法則でおなじみ
ガブリエル・エッティンゲン先生
の名前が出てきます。
WOOPの法則は先延ばしにも
極めて効果的にアプローチできます。

自分の抱く希望や要望、目標には、
ポジティブな思考だけで終わらせることなく、
ネガティブな思考をぶつけて打ち消しておく必要があります。
ポジティブとネガティブがタッグを組んで
コントラストする時、
ヒトはその目標を達成できます。
≫以前記事参照

原因2:課題が魅力的じゃないと先延ばしする

今から取り掛からなければならない課題が
退屈であればあるほど、
ヒトはその課題に着手しません。
当然と言えば当然な話しです。

管理人にとって、冒頭の「面倒くさい」の正体は
この「課題の魅力のなさ」だと感じました。

学生の頃から、夏休みの課題は、
何がなんでも最終週までやりませんでした。
家族中を巻き込んで、泣く思いで取り掛かり、
それでも終わらずに、
夏休み明けの登校日、朝礼が始まるギリギリ直前まで
課題をやっていました。
※周りにも似たような友人は割とたくさんいましたが。

しかしながら、
やれ仕事、家事だと、
やらなければならない課題は退屈でつまらないことが多く、
「面白さを見出すことは少ない」
のが現実です。

ではその時どうしたらいいのか?
ここで紹介するおすすめメソッドは2つです
(管理人が自分で覚えやすい様に名付け直したメソッド名です。)

ゲーム化する

シェークスピアは言います。
「世の中に絶対に良いものもなく、
絶対に悪いものもない。
全ては、気の持ちよう」
であると。

単調な仕事はつまらないものであることの他にも、
最初は情熱を持ってやっていた仕事も、
世の仕事は内容が一定であることが多く、
それに対し、
その仕事に従事するヒトの技術や知識レベルは上がっていきます。
いずれは悪い意味で仕事に慣れてしまい、
情熱は失われます。
そこで、
決められた単調な流れ作業や慣れきった仕事を
淡々とこなすのではなく。(それも大事なことではありますが)
自分なりのゴールを決める、
自分なりの目標を立てるなどして、
自分だけが楽しめるゲームに変えてしまいましょう。
自分が取り掛かるべき課題や仕事を、
自分の意志力を試すテストと位置づけてしまうのです。

苦情処理センターで
楽しそうに働く一人のスタッフに
「なぜこんな仕事なのに笑って仕事ができるのか」と上司が訪ねると、
そのスタッフは、
「けなし言葉辞典を作っています。
今日はどんな新しい悪口が飛び出すか、
楽しみでしょうがないです。」
と答えたそうです。

管理人のおすすめゲーム化は、
仕事の上司が苦手な人物である場合には、
心理学や人間掌握術などを学んで、
それを試す実験台になってもらい、
自分の人生の肥やしになってもらう。
です。
会社が楽しくなり、その上司との関係も改善され、
一石二鳥です。

ご褒美システム

自分で自分を褒めないヒトが多すぎる。
と著者は注意を呼びかけます。
お金をたくさんかけてご褒美を用意する必要はありません。
簡単でもいいので、
課題を終わらせたら、
自分で自分を褒めてあげましょう。

なにか報酬が待っていれば、
ヒトは仕事を頑張れるものです。
課題をやりとげた後に手に入れた報酬への喜びは
遡って、作業・仕事中から感じることができます。

特別な何かを準備する必要はなく、
ダラダラテレビを見るのもいいでしょうし、
夜な夜な風呂上がりのアイスクリームが楽しみのヒトもいるでしょう。
その楽しみの前に、やるべきことをやってしまい、
その報酬として、自分の楽しみを享受する
という癖をつけてみてはいかがでしょうか?
「勤勉さの学習」
と呼ばれているテクニックです。

原因3「衝動的」なヒトは先延ばしする

最後は先延ばしの大ボス「衝動性」です。
ヒトの性質に深く根ざしたこの衝動性は、
前者の2つの原因より、重要性が極めて高いと著者は指摘しています。

重要なことを先延ばしにする意思の弱さは大抵、
この「衝動性」が関与しており、
犯罪の原因にも「衝動性」は深く関わっていると言われています。

衝動性が強く、
子供っぽい言い訳を考えるヒトは、
好ましい結果(健康な身体)と悪い結果(肥満)
を判断する際に、
目の前にある現象(熱々のポテトチップ)が
悪い結果を招くと分かっていても、
目先の満足感を得られるのなら、
喜んでそちらに飛びついてしまいます。

肥満を避けて健康でいるためには、
目の前のポテトチップを我慢すべきなのです。

ではこのポテトチップこと「衝動性」を
我慢するためには、
どうすればいいのでしょうか?
慢性的な自己コントロールの欠如にどう対策すればいいのか?
方法は3つあります。

プレコミットメント

先に対抗策を用意してしまいましょう。

今後あなたが長期的な目標を達成していく上で、
「予めの(プレ)自己拘束(コミットメント)」
を図るのです。

例:ダイエット成功へのプレコミットメント
スナック菓子をすぐ食べられる様なところに置かない
目に付く場所にはやるべき課題を配置する
スナック菓子を食べたくなる前にナッツ(健康食品)などで食欲を満たす
そもそもスナック菓子を買わない。

などプレコミットすることで衝動性に
打ち勝ちましょう。

自己コントロール力アップ

ここでのキーワードは
「キュー(きっかけ)」
です。
キュー(きっかけ)を自ら操ることで、
自己コントロール力を上げて、
衝動性に打ち勝ちましょう。
別名「刺激コントール」ともいいます。
有名なマシュマロ実験を見ると分かり易いです。

母親が子供に
マシュマロ(真っ白で大きないかにも美味しそうなもの)を渡します。
そしてこう言います。
「ママが戻ってくるまで食べるのを待てたら、もうひとつあげましょうね。」

大抵の子供は目の前のマシュマロの誘惑に抗えるはずもなく
マショマロを食べてしまいます。
※我慢する可愛い子どもの姿をYou Tubeで見ることができます

しかし、母親が立ち去るまえに、
マシュマロを戸棚の中に片付けてしまうと、
結果は大幅に変わり、
前者の場合の3倍の子供が我慢できました。

キューコントール術は大きく2つあります。
1つは環境を整えること。
マシュマロ実験の様に、まずはマシュマロを見えない場所に移すなど、
キュー少ない環境に身を置きましょう。
2つは誘惑対象の見方を変えること。
マシュマロを食べたくなったら、
マシュマロはただの白い砂糖の塊である。と
悪いイメージに置き換えてしまうのです。
マシュマロを直接ストレートに認識しないことがミソで、
刺激にストレートに反応する
辺縁系と呼ばれる脳の部位に対する影響を
弱めることができます。

あなたが停止ボタンを押せないそのアニメも
言ってしまえば、ヒトが作ったただのフィクションかもしれません。
いちごショートケーキも、小麦粉と砂糖の集まりと見なしてしまいましょう。

ゴールを細分化する:「一度に1メートルなら人生は楽勝、一度に1キロなら人生は苦役」

ここで言うゴールとは締切りのことです。
先延ばし人間は締切りがあると力を発揮します。
先延ばしはヒトの性(さが)であって、
先延ばし人間=不真面目では決してありません。
先延ばし人間は、締切りの直前になると、
メキメキと成果を発揮させます。
締切り直前でも、
着手さえしてしまえば、意外と早く片付いた。
などの経験を持つ方は多いのではないでしょうか。

この締切り直前のスーパーパワーを利用しない手はありません。

ゴールを細分化するとは、
締切り直前感覚を逆手にとって、
大きな目標達成をゴールに決めたら、
その前段階において、いくつもの
サブゴール
を設けるやり方です。

下のグラフが分かりやすいです。

締切りの直前でモチベーションが
ぐっとアップしているのが一目瞭然です。
ゴールが一つしかない線に比べて、
サブゴールが設定してある線の方が、
誘惑の示す点線より上部にある部分が多く、
明らかにモチベーションが高く保てていることが分かります。

どの程度のサブゴールを設定するかは
ヒトそれぞれです。

おわりに

科学を駆使した「先延ばし対策」が
こんなにもあるとは驚きです。
しかも研究は歴史が古く、
しっかりとした結果は頼りになります。

先延ばしをして後悔したことは数しれず、
何とかしたいを叶えてくれた
至極の内容をぜひ手にとってほしいです。

とは言え
先延ばしが全くない人生も面白くはない。
と茶目っ気たっぷりな言葉で締めくくられていたところも
共感を得られた見逃せない一作です。

今日の本

【名称】ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか
【著者】ピアーズ・スティール著 池村千秋訳
【価格】1980円
【出版】株式会社CCCメディアハウス

管理人
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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw
目指せ実用書知識のウィキペディア!(暴言)

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