はじめに:
本書のスローガンは、
「シンクスモール、リーチビッグ!」
(小さく考え、大きく達成)
です。
逆説的に言うと、
大きな達成を得る上では、
大きく一手を打つより、
小さく動いた方が
その達成率は高くなる。
という結果を示してもいます。
著者が所属していた
ナッジチームでは、
その名の通り、
「ナッジ」
という概念を研究し、
それを国の施策に反映し、
そして大きな成果を上げてきました。
ナッジとは本来、
「ほんのちょっと後押しする」
という意味合いの言葉で、
イギリスでは、
このナッジを使って
環境問題の軽減、
雇用者保険への加入者増加など、
様々な国の施策を成功させています。
例えば、
空港の男子トイレの各小便器には
一匹のハエ
の絵がポツンと描かれています。
それがあると、
男性はそれに向かって用を足すので、
「飛び散り」が減り、
掃除にかけるコストが大幅に減少した
というものが有ります。
まさに、
小さく考え、大きな達成です。
また、会社側が
「雇用保険に入らない人は
それを示す書類を提出してください」
と雇用者に連絡して、
放っておくと勝手に雇用保険に入っている
をデフォルトにした方が
その逆より
雇用保険の加入者が激増しました。
これらナッジを、
イギリスという国に対してではなく、
私たちの生活に落とし込むと、
どんな成果が得られるのでしょうか。
ナッジチームで研究員として所属し、
専門的な知識を持つ著者が書いた、
ナッジによる目標達成メソッド集
とは一体どんなものでしょうか。
学んだことをアウトプットします。
学んだこと:
目標を立てる前に、幸福とは何か?を理解する
目標を達成しうるためには
「目標」そのものが必要です。
本書でも
目標を立て方
についてが真っ先に書かれています。
しかしながらちょっと待ってください。
目標を立てる前に、
なぜ目標を立てるのか?を考えると、
その達成率はそれだけで高くなる。
と著者は言っています。
これはどういう事なのでしょうか。
そもそも私たちが目標を立てるのは
幸福になりたいから
ではないでしょうか。
今の人生に100%満足している
という人は少ないかも知れません。
今の自分では
人生に何か足りないものがある
と考えるからこそ、
その人生を変えるために
私たちは目標を立てて、
より幸福に近づこうとします。
しかしながら、
この達成先にある「幸福」
に対して私たちは誤解をしている
と著者は指摘しています。
例えば、
お金は自分のために使うより
他人のために使う方が
幸福感は何倍にも高まるそうです。
何に対して幸福を感じるのか
を把握した上で、
その幸福感とリンクした目標
を立てると、
その達成率は上がります。
そこで、
人が誤解しがちな幸福感
を改めて再確認し、
正しい目標を立てるのに役立ててみましょう。
本書には、
人はどんなことに幸福感を感じるか
が5つ紹介されています。
1 人との繋がり
2 健康的で活動的
3 新しいことを学ぶ
4 好奇心を刺激する
5 誰かにギブする
の5つです。
着目すべきは、
自分に物を買い与えたり、
お金をゲットしたりなど
幸福感と聞いて、
真っ先に思い浮かぶ事柄は
一つも入っていないことです。
むしろ、
・物よりも「体験」を買う
・誰かのプレゼントを買う
などの方が結果的には何倍も
幸福に繋がることが分かっています。
これから目標を立てるなら、
これらの5つの幸福感
も意識して参考にしてみましょう。
そしてさらに、
目標を立てる時の注意点です。
目標は一つだけに絞り、
その目標に明確なゴールと
明確な達成までの期限を設定しましょう。
本書には、
目標を達成できないのではなく
目標が多すぎるのだ。
と指摘がされています。
志の高い方はとても多いです。
年末年始に目標を立てる時には、
もっと痩せて、
仕事でも昇進し、
恋人との関係も良好で、
新しい趣味も作る
などと一気に攻めすぎてはいませんか?
目標は複数持つと、
それらが脳のリソースを
奪い合ってしまい。
最終的にはどれも叶わない。
という結果になりがちです。
目標は一つに絞ること。
これだけで達成率は上昇します。
そして私がもっと大事だと感じたのは
「明確性」です。
例えば「ダイエット」は
健康を意識した正しい目標ですが、
その方法が分からなければ、
目標として掲げる意味はありません。
朝食のベーコンを野菜に替える。
一駅前で降りて歩く。
間食をお菓子からフルーツに替える
などなど、
目標と現在の差を、
どうやって行動に落とし込むか
までを考えないと、
目標は虚しいただの言葉に
成り下がってしまいます。
目標を立てたなら、
それを明確な行動に落とし込み、
さらに、
明確な期限を設けることでもまた
その達成率は上昇するのです。
プランニングとコミットメント
プランとは計画の意味ですが、
ここではそのまま「プランニング」
という言葉をそのまま使った方が
意味として捉えやすいです。
プランニングには、
従来の「計画」という意味とは
ちょっと違うニュアンスがあります。
目標を立てたら、
次は目標までの
プランニングをします。
目標までの道のりをどう歩んでいくのか。
を考えます。
プランニングが成功するかどうかは
シンプルであるかどうか
がものを言います。
とにかくシンプルにプランニングしましょう。
悪い例は、
例えば減量プログラムを進める場合、
食事のつどカロリー計算を自分でする
などというのは問題外です。
いちいち食べるもののカロリーを調べ
それを足し引きして、
食べられる量を割り出してか食べる
なんて所業を人は毎日できるでしょうか。
おそらく無理です。
プランニングが複雑すぎます。
もっとシンプルに、
脳が『面倒くさい』と判断する前に、
こらなら出来そうだ
と感じるレベルまで分かりやすく且つ、
取り扱いやすくしてみましょう。
例えば、
食事の前にカロリー計算を行う
ではなく、
肉料理は土日だけ
とした方がはるかに分かりやすく、
続けやすいはずです。
ダイエット効果自体は、
食事の前のカロリー計算には
及ばないとしても、
続けることができなければ
せっかくのダイエットも台無しです。
効果の高さだけど複雑なら
多少効果が減っても、
シンプルで分かりやすく
何をすればいいかが「明確」な方法
を選んだ方が、
最終的な成果は
高くなること請け合いです。
目標に向かって挑む行動を
シンプルにすると、
取り掛かりやすくなる
だけでなく、
習慣化
にも良い影響があります。
この習慣化には
コミットメント
をコンボすると更に強力です。
本書には、
コミットメントについての有効性を示す
面白い実験が掲載されています。
想像してみてください。
疲れて会社から帰宅し、
冷蔵庫を開けてみても中は空っぽ。
そんな時は、
ピザでもデリバリーして、
映画でも見ながらディナーしよう
と決めました。
この時、
あなたはどんな映画を選択しますか?
映画には大きく2種類あり、
極端に娯楽性を追求した娯楽英語と
※スーパーマンvsバットマンなど
社会問題などを取り扱った
社会派映画があります。
※シンドラーのリストなど
どう考えても、
一時的なエンターテイメントを選ぶより
社会派映画を見た方が、
今後の人生の肥やしになることは
間違い無いのですが、
仕事から疲れて帰宅した後、
果たしてそれができるでしょうか?
この実験では被験者大学生を
2つのグループに分けて実施されました。
どちらのグループも3日間続けて
映画を見てもらいます。
ただし、
Aグループは、3日間とも、
帰宅した後、その都度見る映画を決めます。
一方のBグループは、
最初の1日目に今後見る映画を
全て決めてしまってから、
その計画通りに映画を見てもらいます。
結果はどうなったか。
案の定、
その都度映画を決めた
Aグループが見た映画は、
全て娯楽映画だったのに対し、
計画を立てた方、
即ちコミットメントをしたBグループは、
ちゃんと社会派映画を選んだ人がいました。
どんな映画を見るかを
予め書き出したり、
貼り出したりする(コミットメント)
した事により、
学生は自分にとって良い結果
を得ることができました。
この実験の映画選択の様に、
それをすれば良い結果が得られると
分かっていてもできない
ということは多いです。
ダイエットした方がいいのは分かっている。
英語の勉強を始めたいと思ったのは
もうかれこれ何年も前。
などなど、
やりたい「意図」はあるのに
「実行」に移せない。
この概念を心理学ではそのまま
実行意図
と呼んでいます。
コミットメントを活用するとは、
自分の実行意図に働きかけること
に他なりません。
何か新しい事に挑戦したり、
億劫だと感じてしまって
始めようにも始められない
こんな場合には、
やりたいことを
ノートや日記に書き出してみたり、
何に挑戦したいのかを誰かに話してみたり、
家族やオフィスの同僚が目につきやすい場所に
張り紙をしてみたり、
といった「コミットメント」
を意識してみましょう。
振り返りをすることで効果はアップする
成功であれ失敗であれ、
結果をそのままにするより
「振り返り」をした方が
その後のモチベーションも
効果も持続させやすいです。
当たり前の事の様に思えますが、
人はたった一度失敗をすると、
約8割の人間は
よほど願望が強い時でない限り、
その後再挑戦しないと言われています。
言っている私も振り返ってみると、
一度料理に失敗し、
美味しくない夕食を食べる羽目になると、
悪いのは自分であるにも関わらず、
その料理は二度と作らない。
という経験があります。
なので、
物事を諦めずに続けたい場合、
この「振り返り」が役に立つし、
その方法も重要です。
ここで心理学用語。
ピークエンドの法則をご紹介します。
この法則は、
どれだけ苦労したかより
どんな良い事(悪い事)があったか
を人は覚えている
というものです。
例えば心理実験によると、
バケツに10℃の水を入れ、
そのバケツに10分間、
手を入れてもらいます。
かなり冷たいはずです。
被験者に若干の嫌悪感を抱かせるのです。
Aグループはそこで実験は終わりです。
対してBグループは、
同じことをした後、
水が徐々に暖かくなります。
冷たい水に10分間手を入れる
という不快感は同じであるにも関わらず、
その後水が暖かくなった場合、
Bグループのストレスは
Aグループより少なくなりました。
結果だけを見れば、
BグループはAより、
むしろ水に手を着けている時間は
長いにも関わらずストレスは少ない。
というものでしたが、
この結果から得られる結論は何か。
人は物事の経験の総和を
覚えているわけではなく、
その物事の最高(ピーク)の瞬間、
もしくは終える時(エンド)瞬間に
どのように感じるかを記憶します。
何かに挑戦し、
それが成功しようと失敗しようと
そこでただ終わりを迎えると
勿体無いことになります。
成功したならその感動を、
何か形に変えたり、
しっかりと味わうことすらも
ふりかえりです。
失敗したなら、
そこで感情に飲み込まれるままの状態
から脱する何かをしてみましょう。
なぜ失敗したかを記録する
やり方を変えるまでの1セットにする
など、
失敗を失敗のまま放置せず、
「ふりかえり」をしてみましょう。
その後の成果に良い影響があることでしょう。
おわりに:
行動科学を応用した
目標達成メソッドには
実に色々なものがありました。
目標設定の方法、コミットメントや
プランニング、ふりかえりの方法の他にも
自分への報酬をどうするか、
目標シェアする事で達成率を上げる、
フィードバックの正しいもらい方
などなど、
たくさんの「うまくいく方法」
が本書には書かれています。
私の感想は、
幸福感の感じ方など、
自分が確信を持っていたことを
根底から変える必要があるものもあれば、
ふりかえりが大事など、
小さい頃から親や教師に
言われ続けていたものなど、
当たり前だと思いつつも
「やってこなかった事」
の2つに分けられるな。というものです。
聞いてみて
そんな事当たり前じゃん
と感想を持ったとしても、
それがちゃんと科学的に正しいんだ
と確信を持てているか否かは
その後の行動につながるかどうか
に関わってきます。
人生は思っていた以上に
シンプルであり、また複雑である。
そしてどちらにも解決策があります。
一人で目標を達成できないなら
他人に監視してもらう
などのシンプルな解決策は、
一見当たり前に見えますが、
「当たり前だよね」と思っているだけで
その方法がどれほど効果的で、
且つエビデンスを持っているか
を知らないと、
自分の生活に落とし込む
ことはないはずです。
本書の中には今までやってきた方法
と類似のものもあるかも知れませんが、
どれもエビデンスを伴った方法であり、
それが再確認できれば、
もっともっとこれからの役に立つはずです。
大樋町
読書もいいけど、「聞く」のもおつなもの👇👇👇
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