第119回【書評】才能の科学から学ぶ【金メダリスト獲得経験のある学者から学ぶ】

読んだ本

はじめに:

本書は、
読むと「才能がない」は言い訳にできなくなる本です。

「1万時間の練習」
と聞いて、はいはいそれね。
と答えられる人は、読書好きの方かもしれません。

心理学者アンダース・エリクソン
一流の成功をおさめるためには、
練習・訓練・学習などに1万時間以上を必要とする。
と提唱しました。

1万時間。
一日で実現可能な現実的練習時間を想定し、
日付に直すと、何かを修めるには、
実に10年という長い時間が必要な計算になります。

学者の中には、この1万時間は
必要条件であって充分条件ではない。
などと否定意見も多いそうです。

しかし、
本書の著者、マシュー・サイド教授は
自身も卓球の金メダリストであり、
自分の経験を元に「1万時間」についても
独自の説明がなされています。

そもそも才能なんて存在するのか?
才能のない人はどうしようもないのか?
1万時間練習すればそれでいいのか?

果たして。

オリンピック金メダルを2枚持つイギリスの学者、
マシュー・サイド先生から
学んだことをアウトプットします。

学んだこと:

やっぱり1万時間「くらい」は必要

モーツァルトは5才にしてピアノとバイオリンを演奏し、
10才にして作曲を始めたといいます。
ここだけを切り取ると、
やはり歴史に名を刻むような傑物は
「才能」を持って生まれたのであって、
歴史に名を刻むのは必然であったのだ。
と思われてしまいます。

果たしてそうなのでしょうか。

著者の意見は違います。
モーツァルトであっても、
歴史に残る名曲を作ったのは晩年であり、
若い頃に作った曲は凡用で
ありきたりだったそうです。

5才でピアノが弾けたのも、
モーツァルトが鍵盤に触れたのが
人よりも早かったからです。
モーツァルトが6才になるまでに
その練習時間は3500時間とも言われています。
周りの子供達が初めてピアノを目にする時、
モーツァルトとの差は既に何千時間にも及んでいたのです。

10才で作曲するまでに、
さすがに1万時間には足りませんでしたが、
常人とはかけ離れた練習時間を
終わらせていたのは事実です。

モーツァルトにしてみれば
才能なんかではなく努力を評価してほしい、
と思っていたかもしれません。

本書には
タイガー・ウッズ、
デビット・ベッカム
ウェルズ姉妹
などなど

世間一般的に“才能に恵まれた”
と思われている人たちが多数登場します。

彼らは才能で成功を手にしたのでしょうか?
結論は違います。

タイガー・ウッズは言葉を話すより先に
ドライバーをおもちゃにしていたとか。
ベッカム選手も、
最初からスーパースターではありませんでした。
一度個人練習を始めれば、
日が暮れて周りに誰もいなくなっても
一人で練習をしていた
とのエピソードが紹介されています。

いわゆる“天才”がもてはやされ、
そこに憧れる気持ちとともに、
絶妙な神技を見せつけられれば
「自分には絶対ムリだ」と思うのは仕方のないこと。

「それでも」と思うのです。

何かを極めたければ、
天才達もそれなりの時間を費やしているのであり、
それは、
私達凡人にはムリだと言っているのではなく、
私達でも、
ちゃんと天才になりえる可能性を持ち合わせているのだ。
と教えてくれているようにも見えるのです。

才能とは練習や訓練の末に
手に入れることができるもの。
成功の裏で努力をしない人はいない
とも書かれています。
もっともな話だと私には思えるのです。

目的性訓練

ではただ1万時間を練習につぎ込めば、
誰しもが金メダリストになれるかと聞かれれば、
そうは問屋が卸さないようです。

1万時間、ただ練習すれば技術は向上するか?
これの答えはノーです。

分かりやすかった例えは、
自動車の運転と金メダリストの違いを見ると
技術向上の差は歴然だという例です。

運転免許証を取得して何十年と運転をしていても
運転に慣れることはあっても、
サーキットで好タイムを出せるわけではありません。
何十年も運転に運転を重ねてきたのになぜか?

これは、
目的を持った練習や学習をしていないから。
との説明がされています。

金メダリストの練習方法は何が違うのでしょうか?

成長を伴う練習には、
・自分の課題に着目すること。
・今できる技術より少し上のレベルの技術を
重点的に意識して練習する。
・練習が終わればちゃんとフィードバックを受ける。
などが必要です。

ただ漫然と続けているだけでは
技術は向上しないことは運転技術を見れば明らかです。
目的を明らかにして、
それをクリアしていく訓練を1万時間続けることで、
才能を超える技術が身につくのです。

マインドセット

心理学者キャロル・スーザン・ドゥエック博士が提唱する
マインドセット
という概念があります。

マインドセットには2種類あり、
成長の気がまえ(成長マインドセット)

固定の気がまえ(固定マインドセット)
です。

才能とは生まれ持ったもので
生涯その程度は変わることはなく、
人生とは生まれ持った才能を証明するためのもの。
という考え方は「固定マインドセット」と呼ばれます。

対して「成長マインドセット」は
自分の能力は伸ばせば伸びると確信を持ち、
困難なことは、最初は打ち勝つことが難しくても、
成長を伴えば乗り越えることができる。
という心構えを持っていることです。
実際にこの成長マインドセットを持つ人は、
自分を「飛躍的に」高めることができる。
という調査結果があります。

本書では
傑出性いわゆる才能は神話でしかない。
とはっきりと述べられており、
このマインドセットも取り挙げられています。

もちろん、身につけるべきは
「成長マインドセット」の方です。

ロンドンのタクシー運転手は、
空間把握能力を司る脳の部位が
一般的な大きさより大きいそうです。
調査対象は熟年のドライバーですので、
若年の成長過程でなくとも、
脳は変化し成長することが
この事実からも証明されています。

成長マインドセットを持って
問題に望めば、今は無理でも、
いつかは超えることができるかも知れません。
少なくても、固定マインドセットでは
超えることは不可能になってしまいます。

一度挫折すると
90%の人間
は再チャレンジを拒む。という言葉もあります。
固定マインドセットでは、
成功できるものもできなくなります。

「何とかなると思って何かをして、
何とも成らない事はあるかも知れない。
しかし、
何もしなければ、
なんとも成らないのは確かです。」

傑出性は才能ではない。
あくなき挑戦や訓練、学習によって
その結果得られるものこそが才能である。
成長マインドセットはこの事実を
加速させてくれます。

おわりに:

身長が高いという才能は、
ない人よりバスケットボールで有利に働くのではないか。
逆に、
背が低く軽い人は、
競馬のジョッキーを目指す上で、
とても有利なのではないか。

本書では、
「体型」についての才能は語られておらず、
目に見えない部分、
外見上では判断できない部分
の才能を説明していました。

才能神話説が濃厚だと理解できると、
それはそのまま、
自分の成功は頑張りやグリッド(忍耐力)にかかっている。
と言わざるをえません。

本書は、
読むと「才能がない」は言い訳にできなくなる本です。

大樋町

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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
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