第161回【書評】多様性の科学から学ぶ【なぜプラダは成功し、コーチは失敗したのか】

読んだ本

はじめに:

アリストテレスは、
「全体は個の総和に勝る」
と説きました。

大きな問題を目の前にした時、
個人で挑むかチームで挑むか。
その結果は大きく違うと言われています。

もし、
今自分が抱えている問題を
解決しようとした時、
似たような考えの人物が、
正しい意見を羅列していけば、
その問題は解決するでしょうか?
答えはノーです。

ここでこそ登場するのが、
「多様性」です。

まずは言葉の説明
人口統計学的多様性とは、
集団の中に、
人種や性別、年齢、宗教の違いなどの違いは
多く存在する事を指し、
認知的多様性とは、
「ものの見方や考え方」に
多様性を見るものです。

本書では、
もちろん認知的多様性にも
とことん着目していますので、
日本のような島国で、
人種的な違いが少ない私たちにも、
得られる知見は多いです。

多様性は私たちにどんな事を
語りかけるのか。
それでは、
米国ベストセラー「多様性の科学」
から学んだことをアウトプットします。

学んだこと:

CIAはなぜ9.11を防げなかったのか

米国諜報機関CIA。
彼らは、2万人の立候補者の中から、
たった1名しかその地位を獲得できない、
エリート中のエリートだそうです。

そのためなのか、
人種、性別、宗教、学閥などについて、
ほとんど似通った者しか所属していない、
いわゆる「画一的」なチームだったといいます。

ここで一つ、
チームに関する研究を
ご紹介します。

仲の良い5人の仲良しチームと
5人中4人は仲が良く、
1人だけ部外者がいる混合チーム。
これらの2チームに、
確定的な答えを導き出せる同じ課題を与え、
正解率を調べました。

成績は、
明らかに混合チームの方が優秀で、
仲良しチームの正解率が54%
だったのに対し、
混合チームの正解率は75%と
はるかに高い正解率でした。

企業についての調査でも、
多様性に富む企業は、
画一的企業よりも、
自己資本利益率が66%も高いことが
分かっています。

CIAの話に戻ります。
9.11が発生してしまった後、
当時の状況を振り返れば、
テロの兆候は「至る所」に
発見する事ができたといいます。
飛行機を武器として使う
という構想は、
10年も前から練られた話であり、
情報の断片は至る所に存在したそうです。

テロの実行犯パイロットが操縦を学んだのは、
被害地であるアメリカだったし、
アルカイダのリーダーオサマビン・ラディンは
「ジハド」を真っ向から宣言し、
母親への電話で、
「もうすぐ大きな事が起こる
しばらくは連絡できない」
旨の相談までしていた。
(しかもその情報を米国は知っていた)
テロ実行を望む人員は多国籍、
何百人にも及んだと言います。

CIAは2万人に1人の倍率で採用された
超がつく優秀な者たちの集団にも関わらず、
なぜこれほどの兆候を
見逃してしまったのか?

結果論かつ後付けバイアスにより、
発生から振り返ることや、
結果から立ち返る言い分で、
当時の組織を避難することはナンセンスだ。
と指摘する人もいるそうですが、
結果には原因があります。
CIAの誰もが、
仕事をサボっていたわけではありません。
愛国心や職業倫理に欠けていたわけでもない。
しかし、
やはりそこには
「多様性」が欠けていた事
による弊害が浮き彫りとなりました。

CIAは、
あご髭を胸まで伸ばし、
みすぼらしい布を纏い、
「洞窟」から、
まるで詩のような指示を飛ばす
オサマビン・ラディンを、
脅威と断定することはできませんでした。
まずもって
その視点自体を持っていなかったのです。
もしCIAに「ムスリム」がいたら。
結果は違ったものになっていたはずです。

ムスリムにとって、
見窄らしく布をまとい、
洞窟で過ごすことは、
預言者ムハンマドを想起させ、
ジハードは、
確固たる意志の表明に他ならない。

もしこの知識を持っている者が
CIAにいたら?
もうほんの少しだけ
多様性を持っていたら?

ひょっとしたら、
9.11は未然に防げていたのかも知れません。
だからCIAは
黒人や女性をもっと沢山雇いなさい。
と言っている分けではありません。
多様性のない集団は、
「問題を問題として気づくこと」
すらも出来ない。
という事に着目する必要があります。

なぜ多様性は必要か

多様性に富むメンバーが
問題を多角的に捉えることは、
大変で嫌な思いをするが、
アイディアの数は10倍にも増える。

10人の人間が
解決策を10個ずつ考えると、
合計した解決策は何個になるか?

これはひっかけ問題で、
もし画一的な集団なら、
似通ったアイディアしか生まれないので、
最悪の場合、出てくるアイディアは
たったの10個です。
対して、
多様性に富むチームであるなら、
10人かける10個で、
100個のアイディアが
生まれる可能性があります。
その差は10倍と聞いて、
どちらが優れているかは明白です。

第二次大戦当時、
ナチスドイツの暗号は、
「エニグマ」と呼ばれる
暗号機により言語が変換されており、
このエニグマの攻略が、
勝利を呼ぶ鍵となっていました。

エニグマは悪魔のような難解さで、
イギリスの諜報機関を悩ませました。
画一的なチームでは手も足も出ない。
そこで採用されたのは、
クロスワードパズルの名手
だったのです。

クロスワードを解く時、
名手であれば、
目の前の問題に集中するだけでなく、
「出題者の意図」を汲み取って
問題を解くのだそうです。

当時の暗号解読チームは数学者ばかりで、
暗号文の中にルールや法則を見出し、
計算して答えを求めようとしましたが、
それではエニグマに対して、
手も足も出なかったと言います。

クロスワードの名手は、
暗号文の外に視点を移し、
ナチスドイツ軍が、
どのように考えて暗号を作るか?
に着目し暗号を解読したのです。

狭く暗い部屋で暗号を作る兵士は、
暗号の中に、
「恋人の名前」や「罵り言葉」
を織り交ぜて暗号を作っていました。
兵士達は、気持ちを外に出さずには
いられなかったのでしょう。

多様性は、
戦争を勝利に導く可能性をも
見出しました。
意見は少ないより多い方が良い。
当たり前のようで、
それを実践するのは難しいようです。

次は、
多様性があるのに発揮されないパターン
を見てみましょう。

ヒエラルキーの弊害

集団に多様性さえあれば、
集合知は得られるのか問題があります。

私たちは、
会議をしたにも関わらず
失敗したのではなく、
会議をしたからこそ失敗した。
という過酷な現実を
認めざるを得ないようです。

なぜなら、
例え集団が多様性に富んでいても、
集団の秩序は、
「順位性(ヒエラルキー)」
が決定するからです。
心理学者や人類学者が導き出した
科学的根拠を伴う結果です。

人間が4人集まり、
何かの課題に取り組む場合、
たちまちヒエラルキーが形成されます。
しかも、
無関係の人間がその映像を見るだけで、
音声がなくても、
誰がどんなポジションにいるかを
理解してしまうそうです。
これは人間の本能に刻み込まれた能力で、
和を尊ぶ習性は、
「群れの動物」であった私たちには、
無くてはならない物なのです。

ヒエラルキーは、
人の意見を食い潰します。
一度リーダーが形成されると、
人は
「自分の言いたい事」
ではなく、
「リーダーの意見に沿う事」
を発言すると言われれいます。
地位の格差が、
方向性を決めてしまうのです。

本書には、
機長に意見するより死を選んぶ。
という衝撃的な話があります。

1970年代に起こった飛行機事故。
飛行機には機長と副操縦士が
ペアで仕事をしますが、
そこには極めて厳しいヒエラルキーが
存在していました。
副操縦士からの機長に対する進言は
よほどのことがない限りされませんでした。

副操縦士は、
燃料が枯渇している事を
機長に伝えられず、
飛行機は墜落することになりますが、
副操縦士が機長に燃料切れを進言したのは、
墜落する寸前でした。

上司が下からの意見を、
「脅威」と捉える組織において、
ヒエラルキーは、
意見やアイディアを殺してしまいます。
部下がその上司に意見するということは
その上司は「分かっていない」
と表明することになってしまいます。

多様性が果たして存在していても、
多様性を発揮させない組織においては、
その効果は全く現れません。

エコーチェンバーを脱出しよう

エコーチェンバーとは、
直訳すると
声や音が反響する音響施設
を意味する言葉です。

本書におけるエコーチェンバーとは
同じ意見や思想を持つ人々が集まり、
自分たちの思想を強めてしまう現象
を指します。

アメリカの大学で行われた
コミュニティに関する実験では、
面白い結果が出ています。
大学やビジネススクールにおいて、
その規模が大きく、
生徒の数が多い方が、
当たり前ですが「多少性」に富みます。

大きな学校で友人を作った方が、
自分の周りを多少性で満たすことができる。
友人を多少性で満たし、
友人の人種や考え方に幅を持たせ、
多種多少な友人が多い生徒が多いはずだ。
科学者はそう予想しましたが、
結果は全くの「逆」でした。

小さい学校の方が、
より多様性に富む友人関係を構築
していたのです。
これはどういうことか?

大規模な学校では、
規模が大きいだけに、
友人を妥協する必要がないのです。
米国カンザス大学には、
1万人もの学生がいますが、
生徒はその中から、
自分とより意見の合う、
自分に似た友人を
思う存分探すことができます。

対して小規模な学校では、
人が少ないため、
自分の意見とは違う学生とも
仲良くなる必要があります。
出会いがそもそも少なく、
数少ない出会いを、
我がものにするためには、
多少妥協することも必要だった結果、
その者の周りには、
多様性に富む友人ができた。
というカラクリです。

エコーチェンバーは、
私たちがたくさん選択肢がある。
ことには反して、
私たちの視野や友人の枠を
狭めてしまうのです。

更にやっかいな事に、
内部では、
反対意見が「不当扱い」され、
リベラルな意見が反映されません。
エコチェンバー現象内にいると、
例え根拠を伴ったデータを見せても、
内部の人間は、
そのデータ自体が
自分たちを惑わす悪きもの
として扱うので、
データそのものを読み価値なし、
意味のない物として
無視してしてしまいます。
ただ無視をするならいいのですが、
エコーチェンバー内の人々は、
外部からの反対意見を使って、
それを不当扱いすることで、
自分達の結束を固めてしまします。

米国が有職人種に侵されている
と信じて疑わない白人至上主義者に、
迫害を受けているのは黒人の方だ。
というデータを見せても、
「そんなデータはまがいもので、
私たちを惑わそうとしているだけだ」
と取り合わないのです。

エコーチェンバー内では、
多様性は決して生まれません。
数が多いだけで多様性に富む。
とは言えない。
考えを改めさせられる言葉です。

具体的に私たちがすべきはなにか

尊敬型ヒエラルキー

ヒエラルキー下においては、
多様性は発揮されない。
では順位性(ヒエラルキー)を
なくせばいいのか。

かつてGoogle社は
階級を完全に無くす
という施作を行いましたが、
うまくいきませんでした。
階級や地位を取っ払うと
社員は混乱し、
業務は滞ってしまいました。

ヒエラルキーは、
多様性を殺してしまう一方、
「その仕事をせざるを得ない」
といった環境下では、
統制性を発揮します。
ヒエラルキーは全く必要ではない。
とも言い切れなかった分けです。

ではどうすればいいのか。
研究によると、
少数民族のリーダーには、
地位や威厳による支配で
部下を統制するという集団は
意外にも少ないのだそうです。

代わりに彼らのリーダーが取る行動は、
章題にもある
「尊敬型ヒエラルキー」です。

寛容である事や、
狩猟の腕が良い事などは
必然的に周りの目を集め、
高い影響力を呼ぶことになります。
威圧や脅威により従属する集団を
従わせるのはチンパンジーなどに
よく見られる習性であり、
人間はあくまで
尊敬が中心となって
集団を納めないと生き残れないようです。

尊敬を集めるリーダーは、
力の誇示ではなく知恵を示し、
脅威による支配では無く、
相手に自由を与えます。
尊敬型ヒエラルキーは、
集団ないに矛盾もなく
安定するのだと言います。

先の実験のように、
母集団に全く関係のない第三者が、
音声もなく尊敬型ヒエラルキーをみても
誰がどんなポジションなのかを
判別することができます。

支配型のヒエラルキーでは
従属者はリーダーを恐れ
リーダーの好きな言葉や
リーダーに好かれる言葉を発します。
そこに多様性は生まれません。

尊敬型ヒエラルキーの場合は、
従属者はリーダーに対し、
自主的に敬意を払って
リーダーの行動を真似をするそうです。
寛容さを真似することで、
集団自体が協力体制を構築し、
集団はまとまり、安定します。
相手を助けることで、
自分も助かるという
「ポジティムサム」
な関係を築くことができます。

明らかに尊敬型が好まれそうですが、
支配型のヒエラルキーが
全く必要ないわけではありません。
前述のとおり、
それをせざるを得ない。
ような状況や、
従属者は木を見て仕事をすればいい。
という状況では、
リーダーは支配的な考え方の方が
うまく行きます。

あのGoogleですら、
階級がフラットな社会作りには
失敗してしまいました。

肝要なのは
支配型と尊敬型、
2種のヒエラルキーが存在し、
それらを折衷すること。
です。

多様性を得るためには、
柔軟な対応変化も必要なのです。

第三者のマインドセット

ヒエラルキーの中において、
イノベーションを嫌悪する者が
頂点に君臨すると、
そこに発展は生まれません。
目の前に大きな進化と利益が
ぶら下がっているのに、
それを掴むことができません。

イノベーションを起こす
起業家やアイディアマンの中には、
移民してきた者が多いと言います。
イーロンマスクやウォルトディズニー、
セルゲイブリンも移民者です。

彼らは、
移民という新しい一歩を
自ら踏み出した者たちです。
移民先では問題も多く、
それを乗り越えるレジリエンス力も
鍛えられました。
新しい物を受け入れ、
自分達の文化と融合し、
問題があればそれを乗り越える。
当たり前だった物に疑問を持ち、
それを変化させる力を持っていたのです。

これは、
第三者のマインドセットと呼ばれます。
移民者でなくとも、
新しい視点で物事を見る事はできます。
集団でそれを行えば、
集団知は高い質を保つことができるでしょう。

おわりに:

Amazon元CEOジェフベゾスは、
「大きな成功には『寄り道』が必要」
と説きました。

まっすぐ進めば効率は良いですが、
そこにイノベーションは生まれません。
日頃とは違う「視点」を取入れるには、
日頃とは違う環境や時間の過ごし方が
必要なのかもしれません。

多様性をうまく利用する。
ということは、
今までとは違うことを受け入れること。
でもあります。

人間一人一人違いがあり、
その多様性を受け入れ、
プラスに働かせるには
精神的な「痛み」が伴うことは
既に説明した通りです。

慣れ親しんだぬるま湯の中では、
居心地はいいものの、
革新的なパワーは生まれない。
そこには痛みが必要だという真理は、
現実の厳しさを教えてくれます。

しかし一方では、
多様性は、
色々な人がいるからこそ成立するもの。
あなたはあなたのままで良い。
と優しく背中を
押してくれる様にも見えました。

多様性は進化をも促した。

個人ではなく集団に着目した本書から、
学ぶべき点は多いです。

大樋町

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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw
目指せ実用書知識のウィキペディア!(暴言)

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