第111回【書評】THINK AGAINから学ぶ【再思考が今、必要な理由】

読んだ本

はじめに:

管理人
管理人

あなたが最後に、自分の間違いに気づき、
その意見を改めたのはいつのことですか?

あなたが何かの見解を持つ時、
あなたが科学者やその分野の専門家でない限り、
あなたの見解はただの勘でしかない。

と、なかなか厳しい意見が書かれているのは
ベストセラー、ギブアンドテイクやオリジナルズの著者
アダムグラント教授の
THINK AGAIN(再思考)
です。

ブレないことや、
自分の信念を持つこと、
曲がらない確固たる意見を持つこと
などは、
特にアメリカ合衆国では
賞賛されてきた考え方のようです。
ですが、
自分の考えや意見、観念を
自分の考えだというだけで
固辞し続けることは果たして懸命か?
とメスを入れたのが今回取り上げる本です。

ぼやっとした考えしか持たず、
周囲に流されるままの人生に魅力は感じません。
かといって一つの考えに固執することは
がんこ親父のようでしっくりきません。

優秀な政治家や起業家、フォーキャスター(予測家)は
自分の考えを再考することを恐れない。
とも言います。

自分の意見に捉われず、
思考する事を思考し直す。
変化の多い現代において、
自分の思いや意見を考え出すことよりも、
既成の思考方法を
『考え直す』事の方が大事だという
本書から学んだ事をアウトプットします。

学んだ事:

科学者の思考で

多くの場合、私たちの思考方法は
牧師モード、検察官モード、政治家モード
の3つの各モードを切り替えながら
思考するのだそうです。

すなわち、

牧師のように、
聖典の様な唯一無二の教義に従い、
それを絶対的に信じて相手を説き伏せる。
検察官のように、
話の聞き手は敵であるので、
とにかく自論で攻撃して論破し説き伏せる。
政治家のように、
自分の施策が一番なので、
周りの人々を「自分の側」に引き込むために
説き伏せる。


とこの3つの思考方法で思考しているとか。

どうでしょうか?
聞いてみると、どうやらどれも良い結果は
生みそうにありません。
著者が導き出した答えもそうです。

これら3つのモードでは、
自分の信念を貫く、
他者の過ちを指摘する、
多くの指示を集めることだけに
没頭してしまうことにより、
自分の意見を省みたり、
自分が間違っている可能性を
再思考しなくなってしまうと言います。

本書のテーマは「再思考する」こと。です。
本書内では、
再思考をできなかったばかりに、
Apple社に市場を譲ることになった
ブラックベリー社の話や、
逆に、効果的な再思考によって
ダークホースから有力馬にのし上がった
大統領立候補者の話が出てきます。

何かを考えることよりも、
元々の考えを改めることの方が大事である。
と説く本書において、
再思考できなくなるこの3つのモードは
避けることが絶対条件と言えます。

そこで著者からのアドバイスは、
科学者モードで思考すること。
というモノです。

科学者はある意味でストイックです。
自分に対しても常に疑問を持ち、
目の前の現実を客観的に分析し、
それに基づき修正をかけていきます。
その根底となるのは、
自尊心より謙虚さ
確信よりも懐疑的である事、
無関心であることより好奇心
をそれぞれ美徳とします。

下述は著作が再考サイクルと呼ぶ、
科学者モードのメンタルツールです。

歴代の米国大統領の中でも、
特に優秀さで抜きん出た者の共通点は、
知的好奇心と寛容さ
であったとの調査結果もあります。

再考することは、
白衣を着てビーカーを眺める科学者だけのものではない。
と著作は言います。

起業家研修において、
科学者モードの思考法を試した企業は、
その業績が比較対象群よりも
2倍以上の利益を上げた。
という調査結果も記載されていました。
彼らも最初は3つの思考モードであり、
科学者モードは
今回初めて試したものです。
意識するだけでも再思考の頻度は、
50%近く上昇していました。

再考することは、
違う自分を受け入れることでもあり、
違う自分を受け入れることは、
今までの自分を否定することのように感じる
と説明があります。
だから人は再考をしないのだと。

この章では、
再考することには
再考しないことよりも
はるかにメリットがあるのだ。
と締めくくりたいと思います。

アームチェアクォーターバック症候群をやめる

知りもしないのに、
やったこともないのに、
知った気になってい偉そうなことを言う
口先だけのスポーツ観戦者、
これが
「アームチェア・クォーターバック症候群」
です。
肘かけ付きの椅子に座りこみ、
歴戦のスポーツ選手を気取って
偉そうにコメントをする姿から
こう呼ばれるそうです。

私も年末の格闘技を見る時に、
陥っていたと自覚があります。

「そこは右に避けないと!
なぜチョーク!もっといけたはず!」

上から目線で、監督ばりに口を継いで出てくるのは
偉そうでそれらしい言葉たち。
自分では的をいた内容に聞こえますが、
玄人が聞いたら
怒ってしまうほどデタラメなはずです。

前章で大事だと説明した
謙虚さ
とは真逆の態度だと言えます。

それに対し、
優秀であるのに
それを自分で認められない人
も存在します。
間違っても自分を優秀だ。
などとは口にせず、
自分ができる人間だ。と指摘されると、
まるで自分を
「ペテン師」
のように感じてしまう人たちのことを、
そのまま
インポスター(ペテン師)症候群
と呼びます。

どちらも両極端で、
傲慢過ぎたり、卑屈過ぎたり
しています。

著者は、
不安や自己否定の感情には、
メリットがあると述べた上で、
謙虚さと言う言葉が正しく理解されていない。
と主張しています。

謙虚さとは、
ラテン語の「地に足を着いている」
を語源としており、元来、
「自分の欠点を自分で認識する『力』」
である。と著者は言います。

自分自身には自信があるが、
自分のやり方にはまだ疑心的である。
といった、自信と謙遜を同時に持つこと
最適な自信レベルである。

これがグラフで分かりやすく
まとめられていました。
極端な考えでは再思考の道のりは遠いようです。

デタッチしよう!

間違いを指摘されると
嬉しくて思わず笑みがこぼれる。

聖人君子でもなければ
到底辿り着けない様な境地に聞こえますが、
著者の知人である
ダニエル・カーネマン(ファストアンドスローの著者)は、
初めて著者と対面した際、
著者からの指摘で
自分の間違いに気づけた事
を心より嬉しく感じていたといいます。

科学者は皆そうなのかと言えば
そんなことはないです。

自分の間違いを指摘された場合
もしそれが仕事のミスであるなら
周囲に迷惑を掛けたわけだし
親身に耳を傾けよう。とは思っても、
嬉しくてたまらない
なんて事にはならないだろうと思います。

この違いは、
思考を分離する(デタッチメント)
という思考方法にあります。

デタッチの方法は2つ紹介されていますが、
本ブログでは特に学びを得た
自分のアイデンティティとのデタッチメント
を紹介したいと思います。

これは、以前に
スマートカットの回
でアウトプットした
フィードバックの受け方
に通じるものがあります。
≫「スマートカット」の過去記事も合わせてどうぞ

人はフィードバックを受ける時、
他人から「指摘」を受けるわけですが、
その際、どうしても
「まるで自分の人格や人生を否定」
されているように感じてしまいます。

そこで、
自分の人格否定ではなく、
自分の行っている実験とみなす。
のがスマートカットでの解決方法でした。

今回のTHINK AGAINでは、
自分のアイデンティティと自分の信念を
切り離して考えた方が良い。
との説明がされています。

極端な例ではありますが、
精神疾患を患ってしまっても、
脳の一部を切り取る治療方法
「ロボトミー手術」
を受けようと思う人は
現代にはいないと思います。
しかし当時は、
ロボトミー手術は効果的で
妥当であると思われていました。
体罰もうそうです。

アイデンティティを考える時に、
自分の経験から得た信念や思考
に囚われてしまうと、
その思考方法から抜け出せなくなってしまいます。

ロボトミー手術が功を奏した患者は、
「脳の一部を切り取る」という、
現代では到底理解不能なことですら神格化してしまい、
それが間違っている治療方法だと教えられても
考えを変えることは難しかったのだと思います。

本書では、信念ではなく、
自分の価値観で自分を定義せよ
と説かれています。

価値観とは、
信念のもっと底にある部分。
自分の人生の中核となる原理です。

「価値観」などと概念的な言葉を聞くと
解釈がとっつきにくいですが、
自分のやりたいことに、
「それはなぜ?」
と質問をぶつけていくと、
意外に簡単に判明したりします。

安全・安定、信頼、自由、
家族愛、友情、愛情、健康など。
価値観にはたくさんの種類があります。

あなたはなぜ医者なのか?
に対して、
勉強ができたからではなく、
お給金が高いからでもなく、
人の健康を第一に考えたから。
とこれが価値観に沿った答えです。

このように、
信念ではなく、信念より深い
自分の価値観
をベースにして自分を定義すると、
新しい定義や概念が現れても、
柔軟にその都度、
自分をアップグレードできるはずです。

アイデンティティとのデタッチメント。
自分の価値観の上に、
新しい思考をのせる。

再思考の一手として是非お試しください。

おわりに:

信念や固定観念は多くの場合、
社会で類型化された概念であることが多く、
社会化された概念は疑問視すらされない。
との内容にぎくりとしました。
この概念は、
驚くほど薄弱な根拠の上に成り立つことが多い。
とも書かれています。

なぜ残業が美徳なのか?
上司の言うことは全て正しいのか?
評価は幹部から部下に下すだけのものか?
など、疑問視すらされていない固定観念は
数多く存在すると思います。

なぜそんな方法を今でも取っているのか?
結果を出している会社をなぜ参考にしないのか?
との質問に論拠を持って答えられる人は
実際には少ないのではないでしょうか。

ただ積み上げられた
ジェンガのような固定観念に人や社会が気付き、
良い方向に向けて変えていく。

現代では変化が多く求められている
ということは分かった。
なら良い方向に変わった方がいいじゃないか。

そのためにも本書の一読は必須と感じました。

何事も
『自分の考えが一番』
となってしまいがちですが、
「再思考こそが現代に必要な技術である」
と思い出すだけでも、
随分と周りを受け入れやすくなったように思えます。

固辞しないカッコよさは、
より良き社会への第一歩になれるのかも知れません。

大樋町

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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
良い本は心の友。
私の友人たち(愛読書)から学んだことをアウトプットする場としてブログを書いております。
毎週、月曜日にブログを更新中。(少ないw)
ありがたい事に、
読者様が増えてきたから身を引き締めねばw

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