第69回【書評】スマホ脳を読んで【最強(凶?)のマルチタスクから身を守れ】

読んだ本

はじめに

9.11の衝撃がまだ記憶に新しい2000年。
この2000年から現在に至るまでに、
(本書に照らすと2019年)
うつ病の患者は8倍に増えたと言います。

周囲の人達の内、
9人に1人
抗うつ剤の処方を受けた事がある。
と、一瞬耳を疑うほど、
精神的に病んでしまう人は
増加傾向にあります。

管理人が学生だった時代、
学校に馴染めず保健室で過ごす子供は
全学童約200人の内
2、3人であったと記憶しています。
子供の順応性とうつ病を比較するのは
間違いかもしれませんが、
現代の大人は
当時の子供より
遥かに社会に適応できていない
と言っても過言ではないと思います。

本書『スマホ脳』は、
精神疾患患者がその数を
極端に増加させてしまった原因に触れ、
その原因の一端が
スマホやインターネットの
普及に依るのでは?
との切り口から書かれています。

科学的証明には、
あと一歩の調査結果ではあるものの、
うつ病の増加した期間
スマホが普及した期間
驚くほど一致するそうです。

本書全ての内容が
解決に繋がる話ではありません。

読者に問題提起を投げかける
と言う側面が強い本書。

スマホ依存が引き起こす問題とは何か?
なぜそれは起こるのか?
人間は抗えるのか?

それでは、
本書を読んで学んだ事を
アウトプットしていきます。

学んだこと

現代人の脳はサバンナ生活仕様


約600万年前に誕生した人類。
約2万年前に農業を始め、
定住という選択をしてから、
人間の生活は一変しました。

種まきから収穫までを
うまく取り計らう様、
時間を発明し、
カレンダーを作り
時間的概念を生活に取り込みました。

現代では
テクノロジーのある生活を
十分に謳歌している人類。
しかし、
人類の歴史から見ると
飛行機や洗濯機やテレビ、
インターネットやスマホがある生活は
人類の歴史の内、
全体の0.1%足らずです。

人類の進化のスピードは緩慢で、
たかだか数万年では
その時々の生活には
適応されません。

人間の体は、
「狩猟採取時代」
にこそ適合しており

スマホという
小さなデバイスから
送られる大量のデータを処理し
それに伴う
ドーパミンへの対処を、
現代人の頭脳は対応することが
まだまだできていないと言って
過言ではありません。

そもそも進化は、
過去にどんな生活をしていたか?
に基づき、
それに対応していくのであって、
「これからデジタルな社会が待っているから
もっとスマホに対応できる様にせねば!」
と時代を先取りする形で
進化は起きません。
まずは、
現代人は
近代テクノロジー自体に
適応されていない。
との自覚が必要な様です。

集中力は現代の貴重品である事実


金魚の集中力は
10秒ほど。

金魚に負けたかも⁈
と一瞬ヒヤッとしましたが、
何とか『今は』勝てている様子。
しかし、今後はどうなるでしょう。

勉強をしていても、
本を読んでいても、
少しでも集中力が
必要なところに差し迫ると、
すぐにスマホに
手を伸ばしてしまいます。
別にスマホに
用事があるわけでもないのに。

何故こんなにも現代人とって
集中力は貴重な物
なってしまったのか?

そもそも
現代人は
マルチタスクに
適合していません。

マルチタスクは
複数のタスクを
同時進行させることですが、
これは人類が
狩猟採取時代に獲得した
生存機能です。

古代、人間のライフスタイルが
狩猟採取であった時代、
仲間の二人に一人は
10歳まで生きることができませんでした。
その理由たるや、
飢餓や感染症、
同種の生物に殺されるなど
現代では考えられないことばかりです。
平均寿命は30歳前後でした。

こんな時代には、
マルチタスクは大いに
役に立ったそうです。

何かを食べていても、
水を飲んでいても、
常に周りに気を配り、
敵が現れないか注意を図る。

日々の生活の中で
注意散漫に生きることは
そのまま自分の生き死にに
関わる重大なことでした。

しかし、現代においては
状況は一変します。

何かにつけて
スマホを手に取りたがる現代人。

何をしている時でも
頭の片隅には
スマホのことがひっかかったまま。

ラインの着信音が鳴ろうものなら、
集中力は一気に
スマホに持っていかれてしまいます。

 

今、目の前にある作業に
シングル(単一)で
臨まなければならない時に
別のことを考えているのでは
それは即ち
マルチタスクです。

人間の脳は
集中については
「一つのこと」
にしか発揮できません。

 

敵が周りにいないか、
複数のことに対して
「注意を向ける」ことはできても
その一つ一つに
集中することはできないのです。

複数のタスクを
同時に進行できている様に見えても、
一つ一つの作業は決して
はかどっているとは言えないのです。

職場で忙しそうに、
色々なことに手を出してはいるけれど
その人の1日が終わって振り返ってみれば
そのどの作業も終えることができていない
こんなシーンを目撃したことがある方は
私だけではないはず。

作業をパッパッと
物理的に切り替えること自体は簡単です。
問題は「集中状態」が切れてしまうこと。

次の作業に移っても
脳内の集中は先の作業に
残ったままになります。
これは「注意残余」と呼ばれる現象で、
スマホのラインに数秒目をやったとしても
脳内の犠牲になる集中は
その数秒以上の時間になります。

集中する先を一旦切り替えてしまうと
元の作業に100%戻るためには
目を離した時間だけでは足りず、
何分もの時間が必要とされてしまいます。

さらに厄介なことに
脳はマルチタスクを推奨します。

現代人の脳は
サバンナ仕様のままです。

あっちこっちにと
タスクを切り替えることに対して
脳は報酬を出すシステムになっています。
タスクを切り替えると
脳内ではドーパミンが放出され
気持ちよくさせてくるのです。

マルチタスクが良くないと
理解している人でも
それを止めることが
できないのも頷けます。

 

さらに
スマホが脳を刺激するのは
SNSの存在です。

人間も動物も、
社会的ポジションが
上であればあるほど
精神的に落ち着くことができます。
ヒエラルキーの頂点にいるボスは
ストレスを感じることが少ないことが
分かっています。

 

人間ならば、ボスは
いじめにあう心配がないでしょうし
動物ならば、群れのリーダーは
自分の子孫を残すことに有利に働くことでしょう。

今の職場などのポジションで、
もしストレスが多いなら
昇進を頭に置いて行動するのも
優れた一手です。

現実の世界なら、
自分のと比べる人間
そう多くはないはずです。
クラスメートなら40人?
大企業に勤務していても
自分の部署の人間となると
そう何十人もはいないのではないでしょうか。
しかし、SNSではそうはいきません。

SNS上にいる人間は
現実世界とは比になりません。
フェイスブックの友達全員、
インスタグラムの気になる人間全て
自分を比べることになります。
そして、ほとんどの場合、
自分より優れている。
自分よりいい場所にいる。
自分よりいいものを食べている。
自分よりスペックが高い
場合が多いです。

ネット上に置いて、
この現実離れしたヒエラルキー
自分にのしかかって来ます。
習慣的にスマホが手放せない
現代人にとって、
何千何万の人間の内
自分はその底辺だ。と自覚させてしまう
SNSは、
まさにストレスの源泉となってしまいます。

特に、
ネット上に新しい世界を見出そうと
SNSを始める人にとっては
このヒエラルキーのストレスが
顕著に現れます。
現実の世界で、
人間関係を始め、
家庭や職場環境において、
しっかりと足場を固めている人は
SNSを問題なく扱えます。

匿名でSNSを始め、
現実でうまくいかないことを
新しいネットの世界でなんとかしよう。
などと考えている人、
俗に言う「高校デビュー」や「大学デビュー」の様な感覚で
SNSデビューを目論でいるような人は、
SNSがストレスの源泉になってしまう可能性が高いので
厳重な注意が必要です。

こと、
スマホ脳は現代人にとって、
マイナス面の方がかなり多い様に見えますが
対抗策はないのでしょうか。
次項では解決策をアウトプットします。

兎にも角にも今すぐ運動に着手することのメリット


冒頭で述べた通り、
本書の内容は、
問題提起の側面が強く、
解決策は、
読者自身に考えさせるにように
書かれています。

しかし、
こと運動については
直ちに取り掛かる様
強く推薦されています。

スマホで失ったモノを
運動で取り戻すと聞いても
「解決策が運動なんだ?そーなの?」
となってしまいそうです。

しかし、
運動こそ
現代の膨れ上がったうつ病や
不安障害などの解決策に繋がると
著者は語ります。

仕事でヘトヘトで帰宅しても、
ランニングシューズに履き替えて
軽くジョギングするだけで、
心は落ち着き、
集中力も戻ってきます。

もちろん運動のメリットはこれに止まりません。
体を動かして心と健康を保つ
これはただの始まりに過ぎません。

運動には
全ての知的能力・機能を
向上させることができるとのこと。
即ち、
集中できるようになり、
記憶力を高め
ストレスに強くなることもできます。

デジタルな情報の洪水に溺れそうな
現代人にとって、
運動は
「最善の方法」
だと述べられています。

ではどれくらいの運動が
必要なのでしょうかでしょうか?

集中力を取り戻すとなると、
これまで見てきたスマホの
強力な集中力の乱し効果を
考えると、
相当な量の運動
が予想されるところですが、
著者曰く、
『なんでも良い』
と言うのが答えです。

著者の母国スウェーデンでは
すでに小学生は、
勉強前に運動をする
と言う習慣を
取り入れているそうです。

小学生に対し、
朝6分の運動

4週間
にわたり実施したところ、
集中力がアップしました。
(集中力を測るテストを継続実施したところ、成績がアップした)

たった一回の運動でも、
成績アップの効果が
出た小学生もいたとのこと。

もちろん大人にも効果は絶大です。

運動の最大の効果を
得たいのであれば
週に3回
1回約45分
の運動をすることで、
知的能力と機能を取り戻す
最大効果が得られるのだとか。

ジムで強高度運動をする
などの本格的な
運動である必要は全くなく
ジョギングやウォーキング
でも構いません。
なるべく、心拍数を上げる様な
運転であれば、
更に効果は高まります。

おわりに

Facebookにイイねの機能を導入した
ロウゼンスタインは、
自分がとんでもないものを
世に送り出してしまったと
罪悪感にも似た感情に
苛まされているそうです。
アイフォンの開発者の一人も、
同様の理由・ストレスで、
汗をびっしょりかいて
目を覚ます日もあるとか。

もはや開発者自身にも
スマホが脳に与える悪影響や
人の行く末は不透明。
スマホが当たり前の現代とスマホ脳が
この先の未来でどうなるかは
「誰にも」分かりません。

テクノロジーを使うか、
テクノロジーに使われるか?
使用する私達自身に、
スマホとの距離をどう取るかが
委ねられています。

大樋町

管理人
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大樋町

初めまして。
大樋町と申します。
「おおひまち」と読みます。
北陸地方住む、アラフォーの読書愛好家です。
日頃は通訳などを生業としております。
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